さんぱー


「モブくんこれ怪しすぎる...。」
「でもナナシちゃん、」
「大丈夫ですよ。カッコワライは怪しい団体じゃありませんから。」
「えぇ...。」

モブくんが"モテる"の三文字にほいほい釣られて怪しすぎる教団に来てしまった。エレベーターから一歩出ると変な仮面をつけた集団が目に入りすぐに帰りたくなった。少しの抵抗として踏ん張ったけどもお姉さんにぐいっと押し出されてしまった。すると仮面をつけた人達がこっちに近づいてきて歓迎の言葉やらなんやらをかけてくるがあかんて帰りたさ100%振り切れそう。少し気が遠のいてる間にあれよあれまと何故か胴上げさせられて舞台の上まで運ばれて立たされた。舞台の上から改めて全体を見ると異様さが本気でやばい。

「帰りたい...。」
「あれ?モブくんにナナシちゃんも来てたんだ。私分かる?同じクラスの米里よ!アンタ達も勧誘されたの?」
「あ、イチちゃん。まぁ、そんなところかな。」
「(あ...この人初会話だ。)えっと僕は...。」
「来たぞ!」「エクボ様だ!」「エクボ様」「エクボ様」
「...皆さん、笑ってますかー!!わっはっはっはっはっ!」
「(うわ)」

急に現れてくねくねそして笑うエクボ?さんを見てもう、本当に、今すぐにでも逃げ出したくなった。エクボさんを筆頭に狂気じみた笑いが何分か続いたあと、エクボさんと信者達がマスクを取った。同じく舞台の上に立っていた知らないおじさんの不気味な連中、に激しく同意する。

「ストップ!」

エクボさんの掛け声でぴったりと止んだ空間に不気味さが増す。はよ帰りたい...。

「今日ここに、ひぃ、ふぅ、みぃ...四人の新たな仲間が加わる事になりました!拍手!」
「えぇ...。」
「布教活動が実を結んでいるようで何よりです!」

もう信者になること決定されてるみたいで頭が痛くなった。辛い。私が内心頭を抱えている間にエクボさんの演説が進む。まぁ、確かに笑う門には福来る、とも言うし笑っていれば楽しい気分になれるかもしれないけど...。

「笑わなければ不幸な人生が続く...死ぬまで。」
「...」
「けっ、笑って幸せになれるなら人生楽なもんだぜ。」
「この方は?」
「平日昼過ぎ公園のベンチで座り呆けていたので、連れてきました。」
「なんと不幸な、不景気の犠牲者!それは社会が悪い!卑屈になるのも当然です!笑えなくなるのも当然でしょう!!でも大丈夫!私の笑顔力を込めた"スマイルマスク"を被って矯正すれば。また笑えますよ。」

そう言うと知らないおじさんとモブくんにマスクを被せた。えぇ...。

「さて、おさげの女の子。君はスマイルマスクの凄さを信じてないね?そんな君にも被ってもらって実感してもらおう!」
「あの、ちょっと...!」

私も半ば無理矢理変なマスクを被らされた。...なんだこのマスク、なんだか無理矢理笑わせてくる、うわ、うわわ。なんだかおじさんもイチちゃんも笑ってるし最近の科学って進んでいるんだね、と思いつつ別に笑いたい気分じゃないからマスクを取ろうとした時にモブくんが手を上げた。

「あの...すいません。これって"笑顔"とか"幸せ"がテーマで"モテるかどうか"は別の話ですよね。帰っていいですか。」
「彼は下校中悩んだ顔をしていたので連れてきました。恋の悩みがあるようです。」
「別に...悩んでないです。」
「やっと気づいてくれたモブくん!」
「うん、ごめんねナナシちゃん。帰ろう。」
「うんうん帰ろう帰ろう。ほらイチちゃんも帰ろう?」
「え、あれ笑顔が。」

私もマスクを取り近くの人に渡し、帰ろうとするモブくんの後をイチちゃんの手を掴んで追う。その瞬間イチちゃんの笑顔が消えた。うーん?時間制?霊幻さんみたいなお試しAコースだったんだろうか?

「待ちなさい少年少女!一生そんな浮かない顔で生きていくつもりですか。ここの皆と一緒に笑うことで薔薇色の気分になれるのですよ!笑わない人は人生を損している。これを機に変わってみては!」
「...僕の父は、「煙草を知らない奴は人生の半分損してる」って言ってました。損って感覚も人によるんだなぁって思いました。」
「ぶふっ!」

モブくんの絶妙な返しに内心ツボっているといつの間にかにらめっこ対決することになっていてもっとツボってしまった。