むかしむかし、とある国に仲睦まじい二人の幼子がおりました。一人はその国で平和の王子と呼ばれる少年、もう一人はその王子の世話係の少女。二人は主人と従者という身分の差を越え、本当の兄妹の様に仲良しでした。何処に行くのも一緒、何をするのも一緒、そんな幼子達を周りは微笑ましく見守っておりました。

そんなある日城から抜け出し花畑に遊びに来ていた少年は少女の手を引き座らせると少しの間目を瞑る様に言いました。少女が目を瞑り少しの間待つとパサりと何かが頭の上に置かれる感触がしたと同時に少年の目を開けてほしいという声が聞こえゆっくり目を開けました。目の間には似合っていると満面の笑みを浮かべる少年がおり、不思議に思いながら頭の上の物を一度外して見ると花畑のお花でできた花冠がありました。

「ベクター様、これは。」
「はなかんむりです!きょうはこれをナナシに作ってあげたくてここにつれてきました。」
「ベクター様...!」

少女は嬉しくて嬉しくて仕方がありませんでした。もう一度頭に被せ何度も感謝の言葉を述べ、一生大事にすると誓いました。幸せな気持ちに浸り城に戻ったならば真っ先に魔術師の所に向かい永遠に咲き続ける魔法をかけてもらおうと浮かれている少女の手を取り少年は少女の名前を呼びました。

「ナナシ、僕のおねがいをきいてほしいのです。」
「はい!ベクター様のおねがいならなんでもかなえてみせます!」
「おおきくなったら僕とけっこんしてください!」
「!」

少女は大好きな少年からの申し出に満面の笑みで頷きました。その瞬間少年は少女に抱きつき嬉しくて紅潮している頬に口づけを落としました。少女も恥ずかしがりながら少年の頬に口づけるとどちらかともなく笑いました。

二人の幼子の幸せはこれからもずっとずっと続くことでしょう。彼等が幼子である限り。けれども彼等が人である限りいつまでも幼子のままでいられるわけではありません。彼等は育ち、世間を知り、理不尽を知り、身分を知り、生まれながらにして決められているものがあるということを知ります。王子である少年、侍女である少女、二人は幼い恋心を見えない深い深い奥底に仕舞い込み暮らしていくことになるのです。それでも互いに微笑み合う時、手が触れ合う時などどんな些細なことにでも幸せを感じ、それで良しとしていたのでした。

Amour transparent
透明な恋


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