収穫祭が終わり、ギルドの騒動も落ち着いたものの私はギルドへ行く気が起きず何日か家にこもっていた。ラクサスのことを思い出しては泣き、食事もほとんどしない。これはいけないと自分でも思ってはいても、外に出ようという気力がわくことはなく私はベッドの上に寝転んで泣きすぎて赤くはれた両目を冷やしていた。
「モニカ!」
泣きすぎたせいか頭痛がする。そこにドアをノックされると音が頭に響いて辛かった。
声からして家に訪ねてきたのはエバだろう。雷神衆のみんなはラクサスがいなくなって自分も寂しいだろうによく私のことを気にかけてくれて、それにはとても感謝している。
「どうしたの?」
「あら……ひどい顔ね」
ドアを開ければそこにいたのは思っていた通りエバだった。エバは私の顔を見た途端に顔をしかめる。そんなにひどい顔なのかと私は指先で目元を揉みほぐしてみた。
「ラクサスがいなくなって悲しいわよね……でも今はそれどころじゃないのよ!マスターが!」
エバの慌てように私は首を傾げた。
・・・
「マスター!」
エバから話を聞いた私はギルドへ駆け込んだ。マスターはエバが言っていた通り、全ての荷物を大きな風呂敷にまとめていて今にもギルドから出て行ってしまいそうだった。
「妖精の尻尾からマスターがいなくなったらラクサスがなんて思うか……どうか思いとどまってください」
「ぬう……じゃが……」
私はマスターの目の前に膝をつきそう懇願する。マスターは渋い顔で頷いてはくれない。他のみんなも説得していたけれどマスターの意志は固そうだった。
ラクサスにマスターのことを任されたのにこれじゃあどうしたらいいのかと私は肩を落とす。そんな私を励ますようにフリードが私の背中を軽くたたいた。
「マスター、モニカもこう言っています。それにラクサスの罰をこれ以上重くしないでください。マスターがやめた事をラクサスが知ったら」
フリードのこの言葉はマスターに響いたようだった。ついにマスターはマスターを辞めないと言ってまとめた荷物を戻しに行く。
ギルドメンバーの何人かがそれを手伝いについて行き、残った私たちはほっと安堵のため息をついた。
「よく来たなモニカ」
「うん、エバが呼びに来てくれたから。フリードは坊主頭にしたんだ」
「ああ。反省を示そうと思ってな」
それは古いんじゃないかと思ったけれど言葉には出さずにおいた。
それからビックスローも私がギルドに来たことを喜んでくれて、赤くなった目の心配もしてくれた。エバに連れ出してくれたお礼を伝えると、嬉しそうに微笑んでくれて私も出てきてよかったと思えた。
「モニカ!オレと勝負しろ!お前も滅竜魔導士ってどういうことだ!」
ギルドに馴染み始めた雷神衆と一緒に談笑していると、私がいることに気が付いたらしいナツが目の前に現れた。ナツは拳を握り、すでにやる気満々だ。けれど私にはそんなやる気はない。
「ごめんね、今はそんな気分じゃないから」
「ラクサスもモニカも滅竜魔法使えんのに隠してたとかずりーぞ!」
なにがズルいのかわからないが私は曖昧に笑って誤魔化す。私が困っていると雷神衆と、ナツを追ってきた様子のルーシィが止めに入ってくれた。
「ちょっとナツ!仕事の話の途中でしょ!」
「モニカがやっとギルドに来たのに戦わずにいられるか!」
「やめないかナツ!」
ゴツン!と重い音を立ててエルザの拳がナツの頭に落ちた。ナツは頭を抱えて床に転がり悶絶する。
「モニカは断っているだろう!」
「ありがとう、エルザ。もう大丈夫だから……」
エルザは一度頷き、まだ悶えているナツを引きずって行った。ルーシィはエルザのげんこつの威力に顔を青くしながら2人を追う。私はそんな様子を見て雷神衆と笑いあった。
「じゃあモニカも来たわけだし、オレたちも仕事行くか」
ビックスローの言葉にベイビーたちが「行くかー」と続ける。
ラクサスがいなくなったことに嘆いてばかりもいられない。みんなで一緒に仕事するのもいいなと私はその提案に頷いた。
「だめよ」
けれどエバははっきりとそう言って首を振る。私やフリード、ビックスローが首をかしげると、エバはきっと眉を吊り上げ私の頬を抓った。
「こんなひどい顔でいくつもり?」
「いひゃい!いひゃい〜!」
「確かにひどい顔だな」
「一緒に仕事するのは先になりそうだ」
そんなにひどい顔なのかとショックを受けつつ、なんとかこれからもやっていけそうだと思え私は笑った。