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普段は月と街路灯だけに照らされている静かな夜の街
しかし今日はパトカーのサイレンが辺りに鳴り響いている
パトカーがランプをチカチカと点滅させながら追っているのは二人の少年、怪盗ジョーカーと助手のハチが乗っている車だ
「待て、ジョーカー!名画<審判の光>を返せ!!」
「やれやれ……盗んだ宝を返せと言われて返すやつがいるかっての。」
「でももう追いつかれそうっスよ〜!」
ジョーカー達が乗っている車とパトカーの距離は、今は真っ直ぐな道だから付かず離れずの距離で走れている
しかし、少しでもスピードを落とせばたちまち追いつかれるだろう
ふむ、とジョーカーは少し考える
「……よし、ハチ。お前は絵を持って先に行け。」
「わかったっスけど……大丈夫っスか?」
「へーきへーき!」
ジョーカーは助手席から立ち上がり、大きく跳躍しながら懐に手を入れる
そして振り向きざまに取り出した5枚のトランプを警官達に向け――
「ストレートフラッシュ!!」
そう叫んだ瞬間、トランプから強い光が放たれて警官たちは眩しさに目を瞑り、ブレーキをかける
次に目を開けたときにはジョーカーたちの姿は消えていた
* * *
大通りでは警官達がジョーカーの姿を探している
そんな警官達の様子をジョーカーは離れた細い路地の影から見て、口に笑みを浮かべる
「あーあ、全然違う所探してる。そっちじゃねーってのになぁ。」
ハチは車で先に走って行った為、ジョーカーは先ほどの場所からそんなに遠くへは行っていなかった
「っし、今日の晩ご飯は何かなーっと。」
やがて警官達の様子を見るのに飽きたジョーカーはハチと合流する為に、歩き出そうとした
その時だった
ポスッと背中に感じた衝撃と回された細い腕
警官に見つかったのかと焦り、逃げようとしたが――
「――やっと、会えた。」
その女性の震えた声を耳にした瞬間、ふと冷静になって状況を確認する
先程様子を見ていた時は警官達は離れた場所にいて、この短時間でこちらまで来ることは不可能だ
それに警官達だったとしたらこんなに細い腕であることはないだろう
また、『捕まえた』『見つけた』ならわかるが、『会えた』と言うのはおかしい
……では、一体誰なのか?
自分のお腹辺りに回された腕……その腕の回され方はひどく懐かしくて愛おしさを感じる
心臓の音がドキドキと大きくなりはじめ、胸が苦しくなり体が震えだす
まさか、もしかして……といった期待が大きくなるが、期待が大きくなるほど違っていた時の落胆は何倍にもなる
どうか自分の予想が合っていてほしいと、恐る恐る振り返えった
「お前……!!」
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