――コンコン


「ジョーカーさん、朝っスよ〜。」


ハチがジョーカーの部屋のドアをノックして入る

ベッドの上にはパジャマのままで上半身を起こしてぼんやりしていたジョーカーがいる

きっとまだ寝ているのだろうと思っていたハチはそんなジョーカーを見てキョトンとした


「あれ?起きてた……。珍しく早いっスね。」

「……ああ。」


まだぼんやりしたままジョーカーはハチの方に軽く目をやり、気の抜けた返事を返す


「まぁいいや。もうすぐ朝ごはんできるっスから、来てくださいね。」

「ああ……。」


またも気の抜けた返事をジョーカーは返す

きっとまだ眠気が抜けきっていないのだろうと、ハチは特に気にせず部屋を後にした

ハチが出ていった後、しばらく空(くう)を見つめていたジョーカーだったが、

やがて一つため息をつき、もそもそと着替えて部屋を出た




――




いつもとは違い、テレビから聞こえてくる音だけがする静かな朝食

原因は静かに朝食を食べているジョーカーだ

普段は次に狙うお宝の話だったり、はたまた何かしら雑談したりしているのだが、今日はそれが全くない

ハチは不思議に思い、声をかけた


「ジョーカーさん……どうしたんっスか?」

「あ?……、別になんでもねーよ。」

「その間、絶対ウソっスよね!?」


食べる手を止め、俯きがちになるジョーカーにハチは何かあったのだと確信する

そして出来る限り優しく声をかけた


「あの、言えないことじゃなければですけど……話すことで楽になるかもしれないっスよ?」

「そう、か?」

「ええ!問題があれば一緒に考える事もできるし……、オイラで良ければ聞くっス!」


自分でも何かジョーカの役に立てれば……そう思い、ハチはドンと自分の胸を叩いて言った

そんなハチの様子にジョーカーは少し考える素振りを見せた後、ゆっくり口を開く


「夢を見たんだ……。」

「え、夢?」


そんなに悩む程の夢とは一体どんな夢だったのか……ハチは首を傾げ続きを待った


「ああ。いつものようにお宝を盗む夢で、鬼山警部達もいたっけな。」

「もしかして捕まっちゃう夢だったんスか?」

「そんな事ある訳無いだろ?オレはお前に宝を預けて先に行かせて、警官達の目を眩ませて足止めをしたんだ。ちゃんと逃げ切ったさ。」

「じゃあどうして……。」

「その後、だ。お前と合流しようと歩き出そうとしたら、後ろから女に抱きつかれて――」


その言葉を聞いたハチはみるみる顔を赤くさせて慌て出す


「な、な!なんて夢見てんスか!?」

「は!?ちがっ、そんなんじゃねーよ!最後まで聞けって!!」


早とちりしたハチにジョーカーは慌てて否定する

コホン、と咳払いをして夢の内容を思い出すジョーカー

あの時、振り返った先には自分の予想していた人物が居た

自分の覚えている姿とは違っていたが、その人物であるという確信がジョーカーにはあったのだ

そしてその夢の内容を言葉にした


「もうずっと会っていない、オレの……妹だったんだ。けど、そこで目が覚めた。」

「……。」


そう言って俯き気味になったジョーカーの表情は寂しさを隠しきれておらず、

見ている方にまでその寂しさや悲しさが伝わってきてハチは言葉を返せずにいた

なんと返したら良いのだろうと考え、ハチはジョーカーの言葉を思い返した

しかし、なんだか聞き逃せない単語が入っていたような――


「……ん?」

「どうした?」

「ジョーカーさんの、妹……?」

「……?ああ。」


確かにジョーカーは『オレの妹』と言っていた

それを思わず口にすればジョーカーは頷いた

ハチは一瞬真顔になった後、ひゅっと息を吸い――


「え……、えぇーーーーー!?」


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