この学園は成績によってクラス編成がされる。
クラスはA〜Eまであり、AがトップクラスでEが最下位クラスだった。
といってもEクラスは成績関係なく問題児もぶち込まれるから、もしかしたら俺達Dクラスより全体の成績がいい可能性もある。まあ、そんなことどうでもいいんだけど。
とにかく、成績で決められているがために、大きなクラス変動はまったくなかった。
よって中等部の頃からほとんど変わらない教室風景を眺めながら、昨日の出来事を思い返す。
言いふらしたりはしない。そうは言ったものの、こんな話を誰にも話せないのはもったいないと思わないだろうか?
というわけで机を挟んだ向かいに座る生徒にすべてを話す。内緒話感覚で告げたから、ほかの耳には届いてないはずだ。広めなきゃ問題ないだろう。
「――っていうのを昨日目撃したんだが」
「ちょ、なにそれ会長可愛い!」
そんな俺の話を聞いて、テンション上げ気味できゃあきゃあ叫ぶのは天野昇(あまののぼる)。
小柄で女子みたいにきゃぴきゃぴしているが、こんなんでも名のある料亭の跡取り息子だったりする。
というかこの学園、結構な数の生徒がこんな感じできゃぴきゃぴしているため昇が特別というわけではなかったりする。
まあでも会長の親衛隊なんかしているくせに恋愛感情は一切ないとかいうから、ある意味特別ではあるが。きゃぴってるのは大概イケメンを見て恋愛的な意味できゃあきゃあ騒いでるし。
ま、そんな昇だからこそ、安心してこんな話を振ることができたわけなんだが。
「はわあ……会長がコケる姿……僕も見たかったなあ」
「あれはホント驚きだったな。思い返せば結構な笑い話だけど、その場に居合わせた身としては笑うに笑えない出来事だった」
「でもいいじゃん、会長の新たな一面が見られたんだもん! ……僕も階段をずっと見張ってればそんな姿見ることができるかなあ?」
「いや無理だろ。あの会長がそんな何度もコケるとは思えないし」
「だよねえ。あーホントずるい。彼方がうらやましいー!」
「はははは」
じとりと細めた目を向けてくる昇に苦笑しながら、昇特製ファンシー弁当をかき込む。
続いてお茶を流し込んでいる途中、昇が何かを思い出したように「あ、」という声を上げた。
「そういえば彼方。あの話知ってたりする?」
「? あの話?」
あの話、で通るような話題なんだから、結構浸透していることなんだろうが……生憎と俺の耳にはそれらしい話題は入っていない。
「実はさ、転校生が来るらしいよ」
「へえ? 何年に?」
「それが1年になんだってさあ」
「また急な。ただでさえこの時期に転校なんておかしいのに1年って」
「変すぎるよねえちょっと。お前はどこぞのシュミレーションゲームの主人公かって感じじゃない?」
面白可笑しそうにそう告げる昇。まあ気持ちもわからんでもない。なんせこの学園、物語の舞台になりそうなくらい美形が多いんだから。
それにしてもまだ4月だってのに1年に転校生か。
昇の言うゲームの主人公じゃないけど、それに近いくらい嫌な臭いがぷんぷんするのは気のせいなんかじゃないと思う。
「まあ相当な理由があったんだろうな。実は高校デビューだー!とかテンション上げすぎて問題起こしちゃったおバカだったりして」
「そのくせ頭は良いって? うわあ、なんかヤダその子、絶対関わりたくないよ僕」
「ま、普通に親の都合でって可能性もあるけど」
「そっちの方が断然いいよねえ」
うん、まったくだ。
俺もこくこくと頷きながら、食べ終わった弁当箱を片付ける。
「でもぶっちゃけさあ、僕たち2年生だからあんま関係ないんだよねえ」
「たしかにそうだよなあ。あっても食堂で見かけるくらいじゃないか?」
「だからまあ最悪、問題児が来ても僕たちには被害が出なそうだし、ま、いっかなって」
「たとえどんなイケメンが来ても、世界の違う俺たちじゃ関わりなさそうだしな」
「あ、優良物件ならちょっと考えるかも」
「おい」
それは会長の親衛隊が言っていいセリフじゃないだろうってか、恋愛対象が女の子限定とかウソだろ絶対。そんなヤツは優良物件でも考えないだろうよ。
そんなたわいもない話をしながら残りの昼休みを過ごす俺たち。
昼休みが終わるころには昨日のテレビがどうのとか親衛隊でどうのとか、そんな話ばかりしていて、この時すでに転校生のことなんかすっかり忘れ去っている自分がいた。