「本当に許せないわ!」
太陽のような笑顔は見る影もなく、彼女の表情は怒りに染まっている。
グリフィンドールの悪戯仕掛け人たちは徐々に頭角を現し始め、度々騒ぎを起こしていた。正義感の強い彼女からすれば目に余る行為なのだろう。
「セブやアリアに何の恨みがあるっていうの!」
彼らの標的にされている私たちを見ては、リリーは憤慨して糾弾する。その行為がまた、彼らにとって面白くないという気持ちに拍車をかけていることも知っている。
「心配しないで、リリー。大丈夫だから」
「大丈夫なわけないでしょう?」
水を吸って重くなったローブを絞る。身一つで歩いていたことと、セブルスがいないことが唯一の救いだった。
これで借りていた本などを持っていたら、マダム・ピンスに何て叱られることか。
「早く寮に戻りましょう。風邪をひいてしまうわ」
杖を持っていても、呪文が分からなければ服を乾かすこともできない。何て無力でちっぽけな存在なんだろう。無性に虚しくなって俯く。
ぽたりと前髪から落ちる雫が水滴なのか涙なのか。どちらでもいい。
力強く私の手を引く彼女の後姿は、薄い膜に覆われ上手く見えなかった。
イースター休暇を目前に控えたある一日の出来事だった。
「……ゲホッ、…ケホッ!…はぁ、」
リリーの予想通り風邪を引いた私はベッドの住人と化している。
マダム・ポンフリーの薬が効いて熱は大分下がったものの、身体は怠く上手く声も出せないため大人しく寝ているしかない。
ヴォルデモートを倒し魔法界に平和が訪れるのは、ずっとずっと先の未来。ハリー・ポッターという英雄がいて初めて実現する。
その要となるのが、母の愛。リリーの犠牲の下彼は英雄となり平和が訪れる。理解は出来ても気持ちの折り合いがつかない。
リリーに死んでほしくない。セブルスを幸せにできるのは彼女しかいない。私ではなく、リリーでなくてはならないのだ。
働かない思考回路の中ぐるぐると堂々巡りを繰り返す。
どうすればいのだろう。私に一体何ができる?
中途半端な知識だけ持っていても、それを活かす実力が今の私にはない。
どうすればいい?考えなきゃ。
ぐちゃぐちゃな気持ちを抱えたままゆっくりと意識が沈んでいった。
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