図書館で目ぼしい本を手に取っては、中を見て戻す。同じ作業をもう何度繰り返したことだろう。
あっという間に時間は過ぎ、私はもうすぐ三学年へと進級する。
この一年、必死になって努力を重ねた。たくさんの本を読んで知識を増やし、呪文を覚えてはまた本を読んでの繰り返し。


「…これも違う」


空いた時間を見つけては図書館へ通い出来るだけの情報を集めた。それでも足りない。時間が惜しい。


「Ms.スネイプ、そろそろ閉館時間ですよ。」

「ごめんなさい、すぐに退室します。」


閉館ぎりぎりまでいることも多く、最近は少し早めにマダム・ピンスが声を掛けてくれるようになった。
熱心なことはいいことだと褒められたこともある。調べている内容は決して微笑ましくはないが。


「……あとは禁書の棚、しかないわよね。」


分霊箱について自力で調べるには限界があった。一般生徒が閲覧できる棚に、闇の魔術を彷彿させる本など置いてあるはずもない。(一部を除いてではあるが)


「随分と熱心に調べ物をしておるようじゃの、Ms.スネイプ」

「ダンブルドア先生…」


気配もなく背後から声が掛かり心臓が飛び上がる。ひとり言を聞かれてはいないだろうか。消灯時間が近い為か、廊下には今私とダンブルドアしかいない。


「あまり根を詰めすぎても身体によくないじゃろう、ほどほどにしておきなさい」

「ご心配ありがとうございます。わざわざそれを言うために?」

「ほっほっほ、それもあるがちと気になることがな」


長く伸ばした顎髭を触る手が止まる。アイスブルーの瞳がきらりと輝いた。


「何かわしに、相談事などはないかの?」


全てを見透かしているかのような質問に脈が波打つ。幼い頃から閉心術は得意ではあったが、この人の前でも通用するのだろうか。


「……いいえ、なにも。」

「…そうか。もうすぐ消灯時間になる、気を付けてお帰り。」

「はい、失礼します。」


背後に感じる視線を振り切り寮へと向かう。きつく握りしめた手を開けば、じっとりと汗が滲んでいて気持ちが悪い。


「遅かったのね、アリア。…やだ、顔色すごく悪いわ。大丈夫?」

「平気よ、ありがとう」

「本当に?無理しちゃだめよ」


ナンシーの小言が聞こえるけれど、曖昧に返事をしながらベッドへと腰掛け背中を倒す。
額へ手を当て目を閉じれば、アイスブルーの瞳が焼き付いて離れなかった。




back