虎の手
「……………」
「…だ、大丈夫?まだ痛む?」
「ん……今はへい、き」
「そっか。ココア持って来たんだけど…飲む?」
「ん、飲む…」
「…いつもこんな感じなの?」
「…寝込むくらい痛いのは久しぶりかな。今回は天気悪い時に来ちゃったから…結構キツ、い」
「ねぇ、こんな時に聞いていいのかわからないけど…」
「ん?」
「どういう痛みなのかなって思って。その、せ、生理の…」
「そうだねぇ…お腹の中を大きな手が掴んでて重くて」
「えっ」
「たまにぎゅっと力を込めて握られる感じ。握る感覚が長かったり、強かったりするし、不定期だし…」
「そうなんだ…女の子ってこんなに大変なんだね」
「ん、でもね。赤ちゃんを育てる大切なところだから。今は辛くてもいつか生まれてくる赤ちゃんのためなら頑張れるんだ…っ、たぁ、また…」
「燐玲」
優しく彼女の名前を呼んで、孫権はそっと燐玲のお腹に手を当てた。
「…孫権?」
「僕は女の子じゃないから何も出来ないけど、辛い時は、僕も一緒にいるからね」
じくじくと走る痛みの電流が、孫権の緩やかな手の滑りに合わせて少しずつ、弱まっていくような感覚に、燐玲の表情が緩み始めた。
「…孫権の手、あったかい、ね…」
自分の手を孫権の手に添える。
陽だまりのようにポカポカ温かい手が燐玲の眠気を誘う。
あと少し撫でるだけで彼女は眠ってしまうだろう。
「おやすみ、燐玲…」
燐玲のぬくもりに負けて孫権も意識を手放した。
「昔と変わってねぇな」
談話室で小さな子どものように仲良く眠る2人を見つけた孫堅。
毛布を孫権に掛けた後でスマホを取り出すと、パシャリと2人の寝顔を撮影。
幼い頃に同じく眠る2人の写真と見比べて苦笑し、サクサクスマホを操作した後、談話室の扉を静かに閉めた。