昔から自分のことが嫌いだった。
必要以上に着飾った性格に、嫌いな人間に瓜二つの容姿。他人に愛される為につくりあげた偽りの自分。
私を特別だと言ってくれる「誰か」と出逢う日を願って、自分自身を「愛される私」で覆い隠して生きてきた。それを辛いと思っている自分がいて、それでもやめられない自分がいた。作り物でしかない存在なんて、誰も本当の意味で愛してはくれない。そうは分かっていても止めることは出来なかった。
世界で最も嫌いな人間にそっくりな、この容貌と体躯はいつだって女の子からの憧れで、男の子の所有欲を煽るようだった。だから、私はその期待に応えるよう。いいえ、それ以上になれるよう。もっと愛されたくて、いつだってみんなに見てもらいたくて。だから、「みんなに愛される名前ちゃん」を創り上げて、その通りに生きてきた。完璧に演じ続けていれば、それがいつか本当の自分自身へと変わると思っていたのかもしれない。
───けれど。偽りはどうしたって偽りでしかないし、「みんなに愛される」存在は、結局誰の「特別」ではないのだ。
年々、その事を思い知らされて、酷く辛い気持ちになった。けれど、今更辞めることは出来なかった。まるで麻薬中毒者か何かのように、私は他者からの視線が与える快楽にすっかり溺れきってしまっていた。
私は不用品なんかでは無い。生きている価値のあるものだ。みんなが欲しがる存在なのだ、という安心感に浸りきっていた。
───本当は。
もう限界なんだと、誰かに気付いて欲しかったのかもしれない。ぽっかりと空いていた心の隙間は年を重ねるごとに少しずつ拡大していった。それでも、一度弱音を吐いてしまえば今まで私の築いていた全てのものが一気に崩れてしまうような気がしたから、私はため息を吐くことすらも我慢して相変わらず「みんなに愛される名前」を演じていた。そんな人生を送り続けたある日、私はやっと運命にめぐり合えたのだ。
「なぁに、その顔!」
「え?」
「きみのその顔を見ていると、凄くイライラするね」
その人は私と顔を合わせた瞬間にそう言った。若菜色の柔らかそうな髪に、キラキラと輝く菫色の瞳。笑顔を浮かべれば世界の全てを魅了するかのような華のある顔とそれに見合う甘い声をした男は、それらを台無しにするような刺々しい空気を纏って私に話しかけていた。
周囲の人間が私の顔色を伺っているのを皮膚で感じる。気を抜けば崩れてしまいそうな表情をなんとか維持したまま、彼のことを見つめて微笑む。
「そんな無理して笑われても不愉快なだけだね!」
次の瞬間、吐き出すような口調で告げられた言葉に、思わず泣きそうになった。やっと、気がついてくれる人が現れたのだ。
運命の人だと思った。そして、彼は私自身を見てくれるに違いないと、勝手に期待をしてしまったのだ。