愛とは何ぞと問われれば、私は「この世で最も快楽を与えてくれるものだ」と答えるだろう。自分を殺してまで求めているものだというのに、私は愛という事象にその程度の認識しか持ち合わせていない。だから私は彼に唇を重ね、体を這わせた。彼の上で、時には下で滑稽な醜態をさらした。けれど彼は私を見てはくれない、いつまでも私に一番欲しい言葉は言ってくれない。私を「特別」にはしてくれない。そもそも、彼は私の名前さえ呼んではくれていないのだから当然だろう。
「ね。こっち、きて」
ソファに座った彼は、初対面の時からは想像出来ない程に蕩けるような声で私を呼んだ。甘い蜜に浮かされた羽虫のように、どこかふわふわした心持ちのまま、伸ばされていた手を掴む。そして引き寄せられるままに彼の膝の上に向かい合うようにして跨った。
身につけていたシャツを脱ぎ捨てて、膝立ちになる。いつの間に背中に回された彼の手が、背骨に沿って上から下へと動いていき、スカートの裾を捲し上げると下着の中へそっと滑り込んだ。そうして、彼の、その年代の男性にしては細く滑らかな指先がゆっくりと中へ埋め込まれていく。
「あぁ、すごい。中、溶けちゃいそうなくらい熱いね」
彼はまるで愛玩動物でも愛でるかのように私の頬を撫でて、熱い息と共にそんな言葉を私の耳朶へ吹き込んだ。
「ぼくに抱かれるの、期待してたんだね」
「ち、が…」
「違う?そんなことないよね、こんなにグズグズにして……ご褒美に、とっても気持ちよくしてあげるからね」
「わっ、あ、わたし、はっ…いいからぁぁっ!」
内壁をなぞるようにぐるりとかき混ぜられた瞬間。指が抜かれ、彼のものが捩じ込まれた。打ち付けられた衝動で悲鳴のようなあえぎ声が出る。いくら濡れているとはいえ、たいして慣らされていないそこはひどく収縮を繰り返して彼を迎え入れる。その様は彼を酷く悦ばせたようだった。ブラジャーをずらして取り出された胸の先を強く吸い上げられながら、臀部を揉まれ、激しく腰を打ち付けられる。先程まで緩やかに高められていた身体には、それらは余りにも刺激が強すぎて、叫びといってもいいような嬌声がとめどなく溢れた。
「や、おっ、おか、し、くなるぅぅぅ!」
「きみ、それいつも言う、よ、ね」
顔を濡らすのが汗か涙かもう分からない。暴力的に与えられる快感に、意識がどこかへ押し流されそうになる。それが恐ろしくなって目の前の身体に縋り付く。彼はぐちゃぐちゃになった私をじっと見つめて、ちいさな笑いと共に動きを止めた。すると今まで与えられていた感覚が喪われたことに耐えられなかったのか、私の身体は快楽の残滓を追ってゆるゆると動きだした。内壁が擦れる度に襞が未だに形を保ったままの彼のものに絡みついて媚を売る。そんな無様な私を見て、彼は罠に掛かった動物を憫れむかのような微笑を口端に浮かべると優しく背中を撫でて言った。
「おかしくなってしまえばいいよ。人ひとりくらいなら面倒見てあげられるからね」