僕は秘密の修行を重ねる内に、他の人には見えないものも見えるようになった。
そしていつしか、他の人には見えないそれに恋をするようになった。
「彼からは何かを感じたんだ」
「私もそんな気がしたよ」
「そうか、君も…やっぱり」
なまえはこのエンジュジムによく遊びに来てくれて、いつも僕の話を親身に聞いてくれる。
だから僕もついなまえには今日1日あった出来事を毎日、何でも話してしまう。
面白い話も、つまらない話も、なんてことないような話も、全部。
今日も古い付き合いのミナキが遊びに来ていたことや、やってきた挑戦者とのバトルの話を彼女にした。
なまえも一緒に見ている事だってあるはずなのに、どうしても話してしまう。
そのくらい、僕は彼女の事を信頼していたし、何よりそんななまえが好きだった。
「僕は、なんだかまいこさんが言っていたことが当たるような気がするよ、でもそうだとしたら僕は…」
僕が俯き加減にそう呟こうとすると、なまえは僕の手の上に透き通った冷たい手を重ねた。
ちっとも温かくなんてないのに、それは僕にはとても落ち着く手だ。
徐々に奪われる体温すらも、最早愛おしく思えてくる。
そんな僕を他所に、彼女は少し怒ったように眉をひそめるとふるふると首を振って髪を揺らした。
「マツバは約束してくれたじゃない、一番最初に私に伝説のポケモンを見せてくれるって」
「…うん、そうだね」
「私、マツバが見せてくれるまでずっと待ってるよ」
ずっと、と繰り返すように言ってなまえはその手で僕の手を握った。
ほんのり桃色に染まった、柔らかそうな彼女の頬に手を伸ばせば、なまえは少し控え目に笑ってみせる。
こんなにいろんな表情を見せてくれる彼女が、他の人には見えないなにかだなんて、到底思えない。
思わず彼女の赤い唇に唇を寄せようとすると、なまえはふっと消えて僕にも見えなくなってしまった。
どうして君は、いつもこうして肝心なところで消えてしまうんだろう。
恥ずかしがっているのか、それとも嫌がっているのか。
消えてしまった彼女には、僕でも聞くことはできない。
頬に添えた手の形だけがいつも残って、何にも触れられずに、ただ乾いた空気が唇を撫でていく感覚ばかりを味わうのは、どうにも寂しいんだ。
君が他の人にも見えるものだったら、そんな事も出来たのだろうか。
僕のガールフレンドはなまえ。
他の誰にも見えない、ゴースト。
ガールフレンドはゴースト
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