「…ノ、ボリ……」


「…ナマエさま?」



唇をゆっくり離すと熱っぽい視線で見つめられ、ぽつりと名前を呟かれた。
こんなナマエさまは、初めてだ。
ナマエさまとのお付き合いは程々に長くなってきたというのに。
はっ、と我に帰ったナマエさまは顔を真っ赤にして、すいませんノボリさん、と言い直して額に手の甲を当てた。



「…ノボリ」


「はい…?」


「ノボリ、と呼んでくださいまし、わたくしも貴女様をナマエと、お呼びします」


「や、あの…」



そんなつもりじゃ、とあたふたするナマエさまが可愛らしくてつい笑ってしまった。
いえ、違いました、可愛らしいナマエ、でしたね。
笑わないでください、と小さく呟いて顔を隠すナマエの手を退けて赤く染まった頬を指で撫でる。
擽ったそうに目を細めたナマエの前髪を退けて額にもう一度口付ける。



「…好きです、ナマエ」


「あたしも、です……」



ナマエは顔を染めながら恥ずかしそうに笑う。
釣られて私も顔が熱くなる。
これは初めて、恋人らしい事をしたのではないだろうか。
そうだ、もう、クダリの書類の後始末なんて止めにしよう。
このままナマエと共に過ごす事にしよう。
あの書類は明日でも間に合わなくはない。
今回ばかりはクダリが一生懸命書類を始末してくれなかった事を心から感謝した。




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