「本当にすまない、この子も悪気があったわけじゃないんだ」
「このくらい全然」
おにびでやけどをした俺様の右手を手当てするカブさんの横で、腕をだらんとさげて悲しそうに鳴くシャンデラ。
さっきの火力は嘘みたいで、ガラスのような顔の中の炎は、今にも消えてしまいそうなくらい小さかった。
めちゃくちゃ落ち込むシャンデラに平気平気、と言って左手でそっと撫でてやる。
まだ俺様の右手のことを気にしているのか、申し訳なさそうにこちらの様子を伺っていた。
「それにしてもカブさんがシャンデラを連れてたなんて知らなかったな、普段手持ちには入れてないだろ?」
「うん、シャンデラにはジムミッションに参加させるポケモンくん達の世話を任せているんだ」
見てごらん、と言われてシャンデラの後を見てみれば、まだたまごから孵ったばかりと思われるヒトモシ達が隠れるように並んでいる。
「なるほどね、もしかして特性って」
「ほのおのからだ、だよ」
そりゃ適任だ、とシャンデラに言うと、初めて俺に向かって嬉しそうに一声鳴いた。
それにこの子はバトルがあまり得意じゃなくてね、とカブさんはへらっと笑う。
耳を疑った。
あれでバトルが得意じゃないって、どういうことだよ。
「いやさっきのれんごく、半端ない火力だったけど?」
「そう、でもこの子はしたがらないんだよ」
だから無理なことはさせたくなくてね、とカブさんがシャンデラを撫でるその手も瞳も酷く優しくて、何故か目が離せなかった。
「この子はね、ある人から預かっている子なんだ」
「…ある人?」
カブさんは俺様がわざわざ聞き返すと思っていなかったのか、目を丸くしてこちらを見たが、すぐにさっきも見せたような優しい視線を彼女に向ける。
「僕の、とても大切な人だよ」
それ以上、俺は何も聞かなかった。
シャンデラと額を寄せ合うカブさんを見れば、そんな野暮なこと聞かなくったってわかる。
カブさんにとって、まさにその言葉の通りの人なんだろう。
そういえば用事があったんだよね、とカブさんに言われて改めてここにやってきた意味を思い出す。
シャンデラに惑わされて、すっかり忘れるところだった。
「じゃ、なんかあったらまた来るからな」
今度は何もしないでくれよ?とシャンデラに目配せすると、わかったと返事したようにカブさんの横でゆらゆらと揺れて鳴いた。
忙しいのにスタジアムの外まで見送ってくれるカブさんとシャンデラに、片手を挙げて最後に挨拶をすると、シャンデラと重なる1つの人影。
あれ、あんな綺麗な女の人、いたっけ。
不思議に思ってもう一度振り返ってみたけれど、そこにはエンジンスタジアムの中へと戻って行く1人と1匹しか見当たらなかった。
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