やっと事務所の扉らしきものが見えた時には、エンジンスタジアムに来てから30分以上が経過していた。
本当に、ここはからくり屋敷かなんかなのだろうか。
盛大に溜め息を吐き出しながら、その扉のドアノブに手を掛けようとした時だった。
「…っ!?」
不気味な紫色の炎がドアノブから立ち上がり、思わず手を引っ込める。
それと同時に、先程とは比べ物にならないほどの悪寒が身体中を駆け巡った。
背後からは、振り向くのも躊躇うほどの殺気。
意を決してその方向を見れば、今にも強烈なのろいを掛けられそうな程、恐ろしく燃え上がるシャンデラがいた。
なんで、こんなところに、こんなポケモンが。
考える前に咄嗟にモンスターボールを握りしめたが、俺は既にそいつの放ったおにびに囲まれた後だった。
こいつは、なんかヤバい気がする。
「ジュラルドン!」
シャンデラが炎を噴き出すと同時に、俺はジュラルドンを繰り出したがそれでは遅かった。
シャンデラののろいを受けたジュラルドンは、生気もまるで感じられなくなり、徐々に体力を失っていく。
シャンデラは苦しそうなジュラルドンを見下ろし、満足そうにゆらゆらと揺れる。
それでもまだ俺様達を許さないとでも言うように、不気味な炎を纏う。
「勝手に入って悪かったな!その、俺様はカブさんに」
そう言いかけると、目の前のシャンデラは更に怒ったように青白い炎を噴き出した。
そいつの纏っていた不気味な紫色の炎は、次第に真っ赤に染まり火力を益々上げていく。
離れていても、その熱で肌が焼けるように痛い。
それはまるで、侵入者を跡形も無く消し去る、とでもいうような業火。
くそ、こんな強力なセキュリティがエンジンスタジアムに仕掛けられていたなんて。
うちもちょっとは見直した方が良いかもな、なんて悠長なことを考えてられるほどには追い詰められていた。
正直、ダンデのリザードンと大差ないレベル。
だってあんなに凄まじい炎のれんごく、俺はまだ見たことがない。
流石、燃える男のジムリーダーが護るスタジアムだ。
「シャンデラ、待つんだ!」
慌てたような聞き慣れた声が廊下に響き渡ると、目の前のシャンデラの炎は瞬く間に消える。
「その人は僕のお客さんだ、大丈夫だよ」
シャンデラのガラスのように透けた顔を、その声の主がそっと撫でると、そいつは細くしなやかな腕を、撫でられた手に絡めてとても嬉しそうな鳴き声をあげた。
それを見れば、とても良く懐いていることが一目でわかる。
すまないね、と困ったように眉をひそめたカブさんに大丈夫だと伝えた。
俺はそれよりも、先程の気迫から一変して、ゆらゆらと嬉しそうに揺れるシャンデラの方が気になって仕方がなかった。
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