そらとぶタクシーに揺られて数十分は経っただろうか。
熱い蒸気と仄かに鉄の臭いが立ち込めるエンジンシティとは異なり、足元には小さくのどかな町並みが広がってきた。
ブラッシータウン、あまり来たことはない町だ。
駅前で降ろしてもらい、駅の売店で飲み物と移動時間の暇つぶしに数冊雑誌を買う。
駅員さんに、ピオニーくんから届いた緑色の切符を見せると、一番奥のホームに停まっていたカンムリ雪原行と書かれた電車に案内された。
言われたとおり乗り込めば乗客は殆どおらず、三両編成の電車はがらんとしている。
そういえば、昨日少しだけカンムリ雪原について調べておいた。
雪原というだけあって、土地の殆どが一年中雪に覆われており、人々が暮らしてる村はたった1つだけらしい。
あとは今から向かうカンムリ雪原駅があるだけで、エンジンシティのような、栄えているところとはなかなか言い難い。
休日だというのに、電車がこれだけ空いているのもそういうことなんだろう。
旅行とは言っていたものの、いったいピオニーくんはそんなところで何をするつもりだったんだろうか。
電車に乗ってからいくらか経ったが、売店で買った雑誌を読むこともなく、ずっと同じページを開いたままだった。
流れていく景色をぼんやりと眺めていると、緑溢れる自然豊かな光景が一変し、辺り一面が雪で覆われた白銀の世界が広がる。
思えば、雪にはあまり縁がない気がする。
凍っているのなんて浅瀬の洞穴くらいだったかな、なんて十数年は帰っていない故郷を思い出しながら、心地よい電車の揺れに揺られ、いつの間にか目を閉じていた。











"終点、カンムリ雪原です"

アナウンスの声にはっ、として目を覚ます。
結局買った雑誌は全く読まずに鞄にしまった。
着替えと暇つぶしの本しか入っていないが、こんなに大きな荷物を持っているのは僕くらいだ。
停車した電車のドアが開くと、途端にこごえるかぜを思わせるような、冷たい風が車内に入ってくる。
噂通りの寒さで、ベンチコートを着込んできて正解だった。
改札を通り、まばらな構内を通り抜けると、見渡す限りの真っ白な雪景色。
ひらひらと粉雪が舞う滑り出し雪原は、幻想的にも見えて思わずため息を吐き出すと、白く揺れた。
確かピオニーくんから駅で民宿の女性に会うように、と言われていた。
少し向こうでポケモン達に囲まれている人が見える。
あの人だろうか。



「すみません、民宿の方ですか?」


「ごめんなさい気付かなくて、ピオニーさんですか?」


「えっと…」



ポケモン達にきのみをあげていた女性に事情を話すと、構いませんよ、と優しく微笑んでくれた。
村までご案内しますね、と彼女が立ち上がるとチルット達がもう行くのか、とでも言うようにふわふわとした羽毛を揺らしながら鳴いた。
またね、と撫でながらお別れを言うところを見ると、自分のポケモンではないようだ。
少し前を慣れたように歩いていく彼女を、追うように僕も雪を踏み締めた。




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