いつもの様に、しとしとと雨の降り続く道路を歩いていた。
いつもの様に傘を差さず、いつもの格好で。
いつもの様に交番の鍵を開ける予定だった。
この、ポー交番の前に来るまでは。
「ねえちゃん、そんな所で寝てたら風邪引くだろ」
交番の入口前に落ちていた白いものの正体が、人であることに気付くのには少々時間がかかった。
誰も、こんな所に自分よりも幾らか若い女が倒れているだなんて、思ってもないからだ。
声を掛けても微動だにしないその娘に、近寄って屈んでよく見てみる。
大量の水分を帯びた髪は、青白い顔に張り付き、纏っている白衣の様な白い服は、泥水ですっかり汚れていた。
面倒事が起きてそうな予感しかなく、思いっきり溜め息を吐き出す。
身元が分かりそうな物がないか彼女に尋ねたが、微かに瞼が開いただけだった。
そりゃそうか、聞く相手を間違えた。
おじさんも仕事なんでね、と一言断って、右のポケットから出ていた紐を引っ張る。
そこから出て来たものは、ねえちゃんのものと思われる社員証のようなもの。
白地のカードに、金の見覚えのあるエンブレム。
べたべたに濡れたそのカードから読み取れた情報は、顔写真と名前だけだった。
だが、その娘が何者であるか、おおよそ理解するには十分だった。
「迷子ってわけじゃあねぇな」
返事こそは返ってこないが、光を失った虚ろな瞳と血の滲んだ艶のある唇が、そうだと肯定している様な気がした。
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