見回り、なんて適当な理由を付けて交番から抜け出すのは、いつものことである。
ねえちゃんも最初は、帰りの心配をしたり、どこに行くのか聞いたりもしてきたが、最近は何も言わなくなった。
まぁ、聞かれても俺がいい加減な返事しかしないから、諦めたのかもしれない。
今日は頼んでおいたアレが、手に入ったらしい。
カプの村を経由して13番道路に停まるトレーラーの前まで行くと、お目当てのものを持ったあんちゃんが待っていた。
「頼まれてたものっす」
「ありがとよ、ほらお駄賃だ」
封筒を受け取ると同時に、スカル団のあんちゃんの左手に幾らか握らせる。
中身を少しだけ確認すれば、数枚の書類が入っていた。
誰かの情報を誰から買って、秘密裏に調べ上げるのは、悲しいかな嫌というほど得意だ。
トレーラーの中で涼ませてもらうフリをして、中身の書類に目を通す。
頼んでおいたアレとは、エーテル財団にいた頃のナマエの資料だ。
勝手に調べるのが、これほど心苦しいヤツはそうそういない。
(悪いね、ねえちゃん)
名前はナマエ。
出身はシンオウ地方で、元々シンオウに伝わる神話や、それに纏わる道具などについて調べていた研究者だったらしい。
よほど凄腕だったのだろうか。
あの財団代表が直々にお抱えの研究員にしようと、熱心にねえちゃんを口説こうとしている手紙まで出てきた。
まぁ、あんな若いのに研究者だなんて、そりゃあ大したやつなんだろう。
エーテル財団に来てからは、ウルトラビーストについてを専門に研究していたようだ。
なんでも、ウルトラビーストに対抗するための手段として財団が開発していたものは、ねえちゃんが昔調べていたものと深く関わっているとかいないとか。
仕入れた情報には、そんなようなことが書かれていた。
要は、ナマエはエーテル財団の開発のためにアローラにやってきた、ということらしい。
遠いところからわざわざご苦労なことだ。
だが、この情報だけではわからない部分もあった。
あんなに必死に口説いて来てもらった学者さんが、なぜあんなところで倒れていたのか。
そんな重要人物が、エーテル財団不在で良いのだろうか。
(おいおい…一筋縄じゃいかねぇ訳ありってことかよ、ねえちゃん)
俺はどうやら、とんでもないものを拾ったようだった。
ニャース以外のものは安易に保護するもんじゃねぇな、なんて思いながら目を通した書類を封筒にしまう。
深く溜め息を吐き出すと、そんな訳ありねえちゃんの住む交番へと帰ることにした。
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