ねえちゃんがポー交番にやってきてからしばらく経ち、交番暮らしも随分と慣れて来たようだ。
最初は少しかしこまって座っていた狭いソファにも、寝転がって退屈そうにポリゴンZを頭をつつくくらいには態度がでかくなった。
「16番道路まで用がある、付いてくるかい」
「良いんですか?」
暇そうなねえちゃんに、こうしてたまに声をかけてやると、毎回嬉しそうにこちらを見て立ち上がる。
なにがそんなに嬉しいのやら。
とは思いつつも、いそいそと出かける準備をするねえちゃんの後ろ姿は、なんだか面白くて自然と口元が緩んだ。
無論、振り向いたねえちゃんにはそんな顔を見せやしないが。
普段一人で見回りという名の散歩をする道となんら変わりはないが、ねえちゃん達と一緒のときは、ふらふら寄り道ばかりでどうにも時間がかかる。
別に悪いとは思っていない。
むしろいい時間稼ぎ、とさえ思っている。
「暇だろ、遊んできな」
付いてきただけのねえちゃんを野暮用に付き合わせるのも可哀想だ。
自分のペルシアンをお供にそう言った途端、ねえちゃんとポリゴンZは15番水道の海岸へ走っていった。
ペルシアンはなんで、みたいな顔をしたが、頼むよ言うと渋々後を追っていった。
ねえちゃんは、ここの海を気に入っているらしい。
大人と言える年齢といえど、まだ子供っぽいようなところが残ってるようにも見えて、思わず笑ってしまった。
大した事件でもないのに、ここのポケモンセンターに呼ばれるのはもう慣れてきた。
ある意味メインの仕事と言っちゃ仕事だが、スカル団のいざこざ如きで、俺をわざわざ呼ぶのは勘弁してほしい。
盛大に溜め息を吐きながら外へ出ると、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
声のする海岸の方を見れば、ねえちゃんとポリゴンZが波打ち際で水遊びしているのが見えた。
お供に付けたはずの俺のペルシアンは、崖下の日陰で寝ていやがる。
見張っとけ、って言っただろうが。
帰ろうと声を掛けようと思ったが、あんなに楽しそうなところに水を差すのもなんとなく嫌になり、15番水道まで降りていく。
サボるペルシアンの横に座ると、鳴きながら膝の上に頭を乗せてまた目を閉じた。
全く、誰に似たんだか。
「あれ?クチナシさん、用事はもう良いんですか?」
「大した用じゃねぇ、もう終わったよ」
「もう、帰りますか?」
ポリゴンZを両手で抱え、眉毛を下げたねえちゃんは少し残念そうにそう言った。
なんて顔すんだよ。
「…あー、おじさん疲れちゃったから休憩すっかな」
「もうちょっといいって!」
楕円形の一風変わった形の手を小刻みに振るわせるポリゴンZと一緒に喜ぶねえちゃんの笑顔は、おじさんには眩しすぎる。
今のねえちゃんに、エーテル財団の面影などどこにもなかった。
「…ナマエ、あんた一体何者なんだよ」
そう呟きながら、横で眠るペルシアンを撫でてやると、こいつは興味なさそうに欠伸をした。
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