ナマエさまは、あれから随分とポケモンについて学び、私が座って教えられることは何もなくなった。
あとは、その得た知識を実践で上手く使えるようになれば、ある程度ポケモン勝負は出来るはずである。
だが、彼女はポケモンを、持っていなかった。
失ってしまったからだ。
何度かポケモンと共に過ごせそうかと、聞いたことがあったが、しばらくは首を横に振っていた。
目の前で相棒を失っているのだ、無理もない。
ただ、時間が、彼女の心の傷を少しずつ癒やし、ようやくその決心も着いたらしい。



「こちらが天冠の山麓で見かけるポケモンです」


「たくさんいますね」


「わたくしの見た限り、ではございますが」



古い天冠の山麓の地図に、私が書き留めておいたポケモンの生息地を彼女に見せれば、おお、と感心の声をあげる。
来たるこの日のため、オオニューラの世話のついでに歩き回って、勝負して、記しておいた甲斐があった。



「気になるポケモンがいましたらお申し付けくださいませ、少しばかりですがどんなポケモンかお話いたしましょう」



ナマエさまは地図を見ながらどうしよう、と悩んでいた。
だか、あるポケモンの名前が視界に入ると、彼女は笑顔を無くしてしまった。
ああ、このポケモンはやはり書いておくべきではなかったか。
申し訳ない事をしてしまった。



「ノボリさんは、ポケモンは種類によって強さが違う、って言いましたよね」


「ええ、能力の高いポケモン、低いポケモンそれぞれでございます」



しばらく、じっと地図を眺めているとナマエさまはぽつりとそう呟く。
きっと、強いポケモンを希望しているのだろう、そう思った。
それならばと、あるポケモンを提案しようとしたが、彼女から出てきた言葉は私が思っていたものとはまるで違っていた。



「この中に、弱いポケモンっていますか?」


「弱い、ですか」



何故彼女がその選択をしたのか、私はすぐにはわからなかった。
だが、言われた通り彼女の望むようなポケモンには心当たりがあった。



「ヌメラは如何でしょう、最弱のドラゴンポケモン、とも呼ばれているそうです」


「最弱、ですか」




彼女は、私の言葉を噛み締めるように繰り返す。
すると、このポケモンにしますと、ナマエさまはすぐに決められた。
理由をお伺いしても、と失礼を承知で彼女に問う。



「私みたい、だから」


「どういうことでしょう」


「何も護れなかったいつかの私みたい、でもノボリさんといればきっと強くなれるから」



一緒に強くなれたら良いですね、と古代の石切り場のあたりに書かれたヌメラの名前を見てナマエさまは笑った。
その言葉に私は頷き、明日にでも探しに行きましょう、と提案する。
彼女は嬉しそうに、はい!と返事をした。




back / next

cover
top