地面から噴き上がる蒸気と共に爆発を起こし、割れた地面の土の塊や石の破片が、ヌメルゴンの足元に直撃する。
ダイノーズの放つ力業のだいちのちからが命中したその大きなヌメルゴンは、一歩二歩と後退ったのち、地響きのような音と共に倒れ込んだ。
手応えは、十分だった。
何より私のポケモンを持ってしても一筋縄ではいかないあの強さ、流石オヤブンというところである。



「行きましょう、ナマエさまが少々心配です」



ダイノーズは私の言葉に返事をすると、ボールに戻っていった。
オオニューラが一緒にいるのだから、きっと身の安全は大丈夫だろう。
それよりも気掛かりだったのは、ヌメルゴンと目があった時の、あの表情だった。










約束した場所に向かえば、出会ったあの日にも見た蹲る姿の人と、それを黙って見守っていてくれた大きなポケモン。
ああ、思っていた通りだ。



「お怪我はありませんか」


「私は、その、大丈夫…です」


「ご無事でなりよりです」



ノボリさんは、と彼女は不安そうな表情で私の顔を伺う。
安全運転で参りましたので、と帽子の鍔に手をかければ、ナマエさまはほうっと胸を撫で下ろしたが、すぐに眉をひそめ険しい表情に変わる。



「…あの日変わるって決めたのに、さっき私は怖くて何も出来なかった」


「オヤブンですので、仕方ありません」


「そんなの、言い訳にはならないです」



私が前に襲われたのだってオヤブンですから、と両膝を抱えた腕に顔を埋める。
その肩は、まだ少しだけ震えていた。



「私…勉強して強くなったつもりでいました、でも何にも変わっていない」


「知識は力なり、という言葉もございます」



深く知るということは大きな力ですよ、と言えば、私の言葉に彼女は恐る恐る顔を上げる。
右手にしっかりと握りしめていたモンスターボールがぱかりと開けば、先ほど仲間にした小さなポケモンが出てきた。
そのポケモンは彼女のことをもう気に入ったのか、ゆっくりと足元に近づいていくと、湿った身体をすり寄せる。
その様子を見ていたナマエさまは、強く唇を噛み締めて、涙が溢れ出るのを堪えようとしていた。



「約束してるんだ、君を悲しませないって」



ナマエさまがヌメラに、左手をそっと差し出す。
彼女の問いに答えているのか、無邪気に遊んでいるだけなのかはわからないが、そのヌメラは嬉しそうに一声あげて、ナマエさまの指先を咥えて食べる真似のような仕草で戯れる。
それを見た彼女は、零れ落ちそうな涙を乱暴に手の甲で拭った。



「私、もっと強くなります」


「ええ、わたくしも精進いたします」


「明日はどんな勉強しますか?ノボリさん」



そう言って、ナマエさまは私を見上げて笑いかける。
その表情に、私の鼓動はいつもよりも速まる感覚がした。
ナマエさまは返事をしない私を不思議に思ったのか、もう一度私の名前を呼ぶ。
あの後の私は、彼女の質問にきちんと答えられていたのか、あまりよく思い出せなかった。




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