"群青の海岸で、ベースキャンプを設営出来そうなところを探してきてほしい"
足元には、青く透き通る海が広がる。
膝の下まで浸かる少し冷たい海水が、初夏の暑さを凌ぐには丁度いい。
私はここで、黒曜の原野と同じように、ベースキャンプ設営に適したところを探さなければならなかった。
コトブキムラからの通り道には、必ず設営することになるだろう。
あとは、調査隊やムラのみんなが使うのに便利な立地を選ぶしかない。
海上の物流にも便利そうだし、今いるこの辺りでどうだろうか。
ねえオオニューラ、と腰元のボールに話しかけようとしたところだった。
「う、わっ…!?」
一際大きな波を背中で受けるとバランスを崩して、私は呆気なく引潮に呑まれる。
しまった、地形も良く見ずに海岸へ近寄り過ぎたかもしれない。
自力で岸に向かって泳ごうにも、急に荒れ始めた外海の波には到底敵わない。
さっきまでいたはずの陸地が、あっという間に遠い存在になってしまった。
(助け、呼ばなきゃ…)
憎いくらいに晴れやかな青空に、必死に手を伸ばしても何も掴めなかった。
大きく口を開けても、言葉はひとつも出てこなくて、しょっぱい海水だけが流れ込んでくる。
そうしてもがいている間に、一際身体の大きな青く長い何かが、私の周りを囲むように遊泳しているのが微かに見えた。
人間というのは、危機的状況に陥ると時間がゆっくり感じられる、なんて聞いたことがある。
なんだか黒曜の原野で見たギャラドスに似ているなあ、なんて呑気な事を考えていられるくらいに、私の中ではゆっくりと時間が過ぎているようだ。
(あ…もう、ダメだ)
水面から赤く鋭い目をしたそれが顔を出し、口を大きく開けた瞬間、私はそう思った。
それと同時に、不思議な音と黄緑色の光が辺りに広がり、その真ん中にはポケモンのようなものが見えた気がした。
いや違うな、あれは最期に見る走馬燈とか、そういうやつの類いだろう。
腰元のボールが何かを訴えるかのように、ぐらぐらと揺れる。
ああ、せめてオオニューラのボールだけでも助かれば、良いのに。
ごめんねと心の中で呟いた頃には、私は意識を手放していた。
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