ここは、チャンプルタウンの名物、宝食堂。
普段はごく普通の食堂だが、ある時だけはごく普通の食堂ではなくなる。
秘密のメニューの注文が入れば、店はチャンプルジム応援店となり、ジム戦一色に変化する。



「コラー!アオキさん!シャキッとしなさいよ!」



見兼ねた女将さんの叱咤激励が飛ぶのも、ジム戦ならではの光景。
今日やってきた学生さんは、なかなかに強いようだ。
だって、あのジムリーダーから、最後の切り札を出させたのだから。



「ほら!アンタも応援しなさいよ!」


「え!?えっと、頑張ってくださいっ…あ、ちょっと!」



応援と聞いて黙ってはいられない私のプラスルとマイナンが、元気よく肩で跳ねる。
元気があるのは大変よろしいが、私の狭い肩で跳ねるのは落ちるからやめなさいって言っているのに。
急に振られてちゃんと応援できなかったのに、私の声が偶然彼に届いたのか、ふと視線を戻すとぱちりと目が合った。











「ジムリーダー、お疲れさまでした!」



黒いスーツを纏ったその人の前に、出来たての焼きおにぎりを置く。
2人前で、火加減はだいもんじ並の強火、付け合わせにはレモンを添える。
常連の彼の、好みの食べ方。
しょっちゅう頼まれるから、ここに来てから割とすぐに覚えた注文だ。
強火で炙った香ばしい醤油の香りに、一緒に料理を持ってきたはずのプラスルとマイナンも食べたそうに見つめている。



「流石、非凡サラリーマンですね」


「…その褒め方は、ちょっと」


「ごめんなさい…でも私、アオキさんのバトル、好きですよ」



アオキさんは、私の顔を見上げるとそのまま黙り込んでしまった。
ちょっとはサービスなんて言いながら、余裕の勝利を納めた彼への称賛のつもりだったが、気を悪くしてしまっただろうか。



「自分は…」


「ナマエちゃーん、追加注文良いかなー?」



そんな時に、ちょうど別のお客さんが私を呼ぶ声がした。
何かを言いかけたアオキさんが、結局何を言いたかったのか分からずじまいになってしまったが、今は呼ばれた席に向かわなくてはならない。
ここでは結構緩く働かせてもらっているが、これでも一応仕事中だ。



「それじゃあ、ごゆっくり!」



常連さんに軽く会釈をして呼ばれた席へ小走りに向かうと、いつもエプロンの腰紐に付けているお守りのかいがらのすずが慌ただしく揺れた。




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