Envy
最近ノボリさんの様子がおかしいとクダリさんに言われた。曰く、吸えもしない煙草を持っていたりピアッサーを買おうとしていたり。煙草やピアスを否定するつもりはないがいきなり過ぎておかしい。何かあったのか聞いて欲しい。と、そういう話だった。
「というわけで単刀直入に聞きますけどノボリさん。最近何かありました?」
「…………」
向かい合わせに座り、聞いた。ノボリさんは俯いていて表情は見えない。
「元々興味あったんですか?」
「…………」
強い口調にならないようにと意識してはいるがノボリさんは無言のまま。じっと俯いて、テーブルの端か膝の上を見ているようだった。
「別に悪いとは言わないですけど、急だからクダリさんも心配してますよ?」
「…………」
クダリさんの名前を出してもノボリさんは何も言ってくれない。饒舌なノボリさんが静かってめっちゃ怖いなこれ。
「……私にも言えない、ですか?」
クダリさんの名前でダメだったんだから私でもダメだろうとは思いつつ、聞いた。ちら、とこちらを見たノボリさんの目は何とも不安そうなものだった。
ノボリさんの唇が小さく震えている。何か言いたそうな風に見えたので待った。
そのまま五分かそこら経って、ぽつり、言われた。
「……先日、インゴさま方がいらっしゃいました」
「ああ、はい」
確かに研修だか何だかでサブウェイボスの二人がウノヴァから来ていた。そういえば二人とも煙草吸ってたしピアスばちばちに開けてたっけな。だからか?
「憧れ的なやつですか?」
聞くとノボリさんは少し不思議そうな顔をして「……ああいった方が好きなのでは?」と言った。
「はい?」
「…………ひどく熱のこもった目で彼らを見ていらしたので……」
「はい?」
「違うのでしょうか……?」
「えっ……そんな目してました……?」
「はい。……彼らを常に目で追っていらしたかと。特にピアスを見ているような……」
「あっそれあれです、痛くねーのかなとか横向いて寝れんのかなとかヘリックスとかトラガスとか開けてみたいけど安定するまで寝る時とかどうしてたのか聞いたら教えてくれるかなとかそんなんです」
「…………」
「どっちかっていうと自分で開けたい的な」
「…………彼らが喫煙所に行くときもよく見ていらしたかと思うのですが……」
「そりゃ一時間に一回十分そこら煙草吸いに行ってたら見ますよ……こいつら何しにきてんだ総休憩時間どんだけだよ……ってなりません?」
「ああ……成程……」
「せめて二時間か三時間くらい我慢出来んのんかなーみたいな程度です。はい」
「さ、左様でございましたか」
「…………もしかしてノボリさん、それで煙草とピアスに興味を?」
「…………」
図星だったのか、ばつが悪そうにノボリさんは口を結んだ。三角形の唇がより険しくなっているのが何とも可愛くて。
立ち上がり、ノボリさんに近付いてノボリさんを抱き締めた。びっくりしたように身体が揺れたのを抑えるように強く。
「ノボリさん、ピアス開けてなくても煙草吸わなくても私ノボリさんのことが好きですよ」
「っ!」
「だからそんなに不安にならないでください」
「……はい」
「安心してくれました?」
「はい。すみません。ご心配をおかけして」
「クダリさんに言ってください。不審がってたんで」
「そうします。……わたくしも、あなたさまを愛しておりますよ」
「!」
不意打ちのように柔らかな笑みでもって言われた。とくりと跳ねた心臓の音が聞こえていないといいなんて祈ったけれどきっとノボリさんには伝わっているのだろう。頬に伸びてきたノボリさんの手は熱くて、きっと同じ気持ちだと思えた。
end.
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