prologue

平和だ。
今日も私の世界は平和だった。
いつも通り起床して、いつも通り学校に行く。いつも通り部活まで済ませたら、いつも通り帰路につき――いつも通りの一日を過ごす。その繰り返しだ。
平和なのは良いことだ。私達は当たり前のように豊かな生活を享受しているけれど、世界には飢えに苦しむ人もいれば、学校に行きたくても行けない人だっているはず。
それなのに、変わり映えのない毎日に退屈を感じるなんて、贅沢過ぎるというものだ。分かっている。分かっていても時折忘れてしまうことだってある。それが人間というものだ。
そういう心の隙をついて、思わぬアクシデントは発生するのかもしれない。
自転車で下校中の、信号のある交差点だった。横断歩道もある。信号は青だし点滅もしていない。だから油断していた。
その日は部活帰りでちょっと疲れていたこと、そしてくだらない考え事に気を取られてしまっていたこと。
その二つのせいで、横断歩道に突っ込んでくる大型トラックに気付けなくて。

さすがにこの時ばかりは、平穏な日常の中でも死を覚悟した瞬間だった。
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