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「なあ。リカバリーガールいるか。」

月曜日の放課後、
生徒達の帰宅する声が響く時間。
保健室の薬品棚を整理していた私に、そう話しかけてきた男の子は、左右で違う髪色と瞳が印象的だった。

「リカバリーガールなら、職員会議で今はいないよ。あと十五分もすれば戻ってくると思うけど…」

私がそう答えると、男の子は『分かった』と簡潔に告げてあっという間に去ってしまう。

素っ気ない人だなあ、と思ったが私は彼に見覚えがある。 出久くんのクラス ヒーロー科1年A組の教室へ遊びに行った時に、一番後ろの席でひとり淡々と本を読んでいた。
名前は確か、轟焦凍くん。
どことなく近寄り難く、氷のように冷たい雰囲気が記憶に残っていた。





でも今―――――そんな私の記憶をかき消すほど、熱い炎を放ちながら、彼は両目に涙を浮かべている。そして右頬を伝うものが灼熱の光を受けて輝いた。
その姿があまりにも鮮烈で、胸が熱くなる。
轟くんの事を、まだ何も知らない私にも、彼の中で何かが変わった音が聴こえた。


そして直感的に、彼のことを『知りたい』と思った。


2021/03