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通学中、電車を待っている間に友達とのLINEを見返す。

『実は職場体験中にヒーロー殺しに遭遇してしまったんだけど、エンデヴァーが助けてくれたから大丈夫だったよ。その時に少し怪我をしたけど、もう退院して職場体験先のヒーローのところへ戻ってるから心配しないで!』

ずっと憧れていたヒーローになる夢のため、充実した職場体験を過ごしているのかと思っていた。しかしヒーロー科の生徒が職場体験中にヴィランに遭遇した、という話を聞き心配になって連絡をしたら、返事はこの内容。

まさかその話の当事者が出久くんで、”退院して“という事は入院するほどの大怪我だったということだろうか。そしてヒーロー殺しステイン、最近ニュースでよく聞いていた名前だ。何人ものヒーローが被害にあっているという、ヒーローを狙った凶悪ヴィラン。そんな危険人物に出久くんが遭遇してしまったのだと考えただけで体温が下がっていくのを感じた。

「(こんな返事だけじゃ、余計に心配するよ…)」

心の中でそう呟きながら、学校に着いたら出久くんからきちんと話を聞こうと決め、私は電車へと乗り込んだ。



*



「失礼しまーす!出久くんいます…か…」

学校に到着するやいなや、出久くんに例の件を聴くためA組の教室へ向かった。
しかし目に飛び込んできた光景に思わず固まる。

出久くんが一緒にいたのは、いつも仲良しの飯田くんと、もう一人。
体育祭での姿が、私の中で鮮やかに残っている、轟くんだった。

「あれ!?祐佳ちゃんどうしたの?」

そう言いながら、出久くんがこちらへ向かって来てくれてハッと我に返る。飯田くんと轟くんに軽く会釈をして、出久くんに職場体験の件を聞いた。

「どうしたの?じゃなくてLINEの返事どういうことか全然分かんなくて心配したよ…!?ヴィランに遭遇したってだけでめちゃくちゃ心配なのに、もう退院したとか言われても祐佳からしたら入院してたの!?って感じだし…」

「あ…!ごめんね………!!後できちんと返事しようと思ってたのに職場体験でいっぱいいっぱいで……すっかり忘れていました………」

忘れていた。
今、出久くんの口から忘れていたと聞こえたのは、私の聞き間違いでは無い。こんなにも心配していたのに忘れられていたのか、私。出久くんの目標に向かって真っ直ぐ突き進んでいく姿勢は彼の長所の一つだが、同時に熱中しすぎると周りが見えなくなる所はいただけない。

「……………………忘れていた」

「ゆっ祐佳ちゃん…………?怒ってますか……………???」

その時、タイミング悪く廊下に予鈴のチャイムが鳴り響き、朝のホームルームがもうすぐ始まることを告げてくる。私だって、本気で怒っている訳じゃない。職場体験が出久くんにとってどれだけ意味のあるものか分かっているつもりだ。ただ、大事な友人に自分が心配していることを忘れられていたことが寂しかったのだ。

「もう今度からはちゃんとそういう怪我した時とか連絡してね。本当に心配だから。」

「はい!!!!!!!分かりました!!!!」

彼のその大きな返事を聞いて、『約束だよ』と念を押すと、首がちぎれてしまいそうな勢いで、出久くんは首を縦に振って約束してくれた。怪我も治っているみたいだし、今回だけは許してあげよう。そう思い、じゃあねと手を振り自分の教室へと向かった。




「(そういえば出久くんが轟くんと一緒にいるの初めて見たなあ…)」

自席に座り、ふと思い出す。轟くんが誰かと一緒にいるところ自体、初めて見た気がした。思い出すのは初めて話した保健室での事と、まだ鮮烈な記憶の残る体育祭での彼の姿。その二つの記憶の中の轟くんは全くの別人で、彼の事を知りたいという気持ちも、私の中にまだ残っていた。


2021/03