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―――某国、某日。
その女性…水無怜奈はとある閲覧室の中にいた。水無以外に人は数人弱といった感じで、この時間帯の利用者は少ないと見える。
水無は数多くあるパソコンの中から、特に理由なく隅のそれを選択した。パソコンがある机の端はそれぞれ板で区切られており、覗き見される心配はない。水無は早速、専用の認証カードを差し込んでパソコンを起動した。いくらこちらと先方が協力関係にあるとはいえ、基本的にここの情報の持ち出しは原則禁止されている。それを無断でやるのだから、心してかからねばならない。水無は己の記憶力を信じた。
調査すべき概要はしっかり記憶している。入力してみれば、いくつか項目が現れた。
(これか)
先頭に出てきた項目を選択する。どうやら課についての内容らしい。スクロールしていけば、対象は“連絡課”の欄で見つけることができた。ここまでは予想通りだ。
これは人事の項目だったようで、それ以外に特筆すべきことは記載されていない。もう少し深くまで探るには、直接名前を打ち込む以外に方法はないようだ。
水無はキーを叩き、対象の名前を入力する。すると一件だけ関連項目が出てきた。
「あった…!」
クリックしてみる。すると項目が開くことはなく、代わりにこんな文章が出てきた。
【This item can not be viewed】
「閲覧不可?なんで…」
水無の地位は決して低くはない。それなのに閲覧不可ということは、かなりの秘匿性が保たれなければならないということだ。対象は一体、何者なのか。
「おっといけない」あまり考え込んでも仕方がない。これ以上長居するわけもいかなかったため、取り敢えず今日は大人しく引き下がることにした。判明したことは家に帰ったあとで報告しよう。
水無はブラウザを閉じ、認証カードをきちんと取ったのを確認して閲覧室をあとにした。これから忙しくなる予感を抱きながら。