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「水無伶奈って、この間アナウンサーを辞めた人かい?」
「「!?」」
 突然の第三者の声に二人は肩を震わせた。
「ああ済まない、驚かせてしまったね」
「夕さん…いつからここに…?」
「ん?さっきだよ。お手洗いを借りたくて」
 普段通りの彼女にコナンは安心する。「お手洗いでしたら突き当たりを右ですよ」「ありがとう」すかさず赤井が沖矢として述べたため、片桐はその場に長居することなくコナンたちに背を向けた。
 彼女が角を曲がったのを確認し、コナンは口を開く。
「でもどうして怜奈さんが…」
「…、俺たちの仕事はそういう危険と隣り合わせだ。理由なんてない。それをよく覚えておくがいい」
「でも赤井さん」
 納得がいかなかったが、赤井が無言で唇に人差し指を当てたことによりコナンは押し黙った。そうだ、今日はここに自分たちだけじゃなく片桐がいる。いくら彼女の頭が切れたとしても、巻き込むわけにはいかない。
「夕さんはこういうことに平気で首を突っ込みそうだし、できるだけ関わらせないほうが良いよね」
 そう述べれば、どういうわけか赤井は何とも言えない顔をした。「赤井さん?」服の裾を引っ張れば、赤井はフッと口角を上げた。
「その言葉、そのまま君に返すとしよう」
「なっ…!」
 まあ大人から見れば自分もそうなるだろう。言い返すことができず、コナンはぐっと唇を噛んだ。