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「――聞いてないんだけど」
どこかの雑居ビル、どこかの一室にて、ある人物の不機嫌な声が響く。相手は携帯電話越しのようで、人物は苛立たしげに人差し指で机を叩いた。
「は?ふざけんなよ、なに勝手に決めてんだよ」
舌を打つ。今すぐにでも撃ち殺してやりたい衝動に駆られたが、その人物はぐっと堪えた。
「うん、うん……は?オバサンが許可したの?何で?」
“オバサン”という単語を発した瞬間、人物の眉根が不愉快そうに顰められた。「何でこっちに先に言わないんだよ」人物の不機嫌は続く。
<邪魔してきやがったテメェに先に話すわけねえだろ!!!>
突然の怒鳴り声に、人物は電話を耳から離す。
<前にテメェがやったこと、俺ァ忘れてねえからな!>
「……」
<いいか?今度また邪魔しやがったらテメェから殺してやる!!>
そう怒鳴り終えると、相手は電話を切った。不通音が無感情に鳴り続ける。その人物はぐっと薄桃色の唇を噛んでから、電話帳を選択する。数少ない登録番号の中から“オバサン”と登録されたそれを押した。
「…ああ、オバサン、ちょっと訊きたいことがあるんだけど………あーもーハイハイ済みませんって〜。で、教えてくれるかな?―――ベルモット」
<ほんっと…相変わらずムカつくガキね>
その人物はにやりと笑った。
「何で“そんなこと”になってるの」
<知らないわよ。元々奴は警察の目を攪乱する為に取引しただけなのに、警察に恨みを抱いて勝手に暴走してるだけでしょ。私の知ったこっちゃないわよ>
「放っておいて良いの?」
<良いんじゃないの?あいつら、組織のこと何も知らないじゃない>
鬱陶しそうにベルモットは言って、溜息を一つついた。
<ま、どうせ“片桐夕”がなんとかしてくれるでしょ。なんたって“警察官”だものね>