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 ――白鳥刑事が病院に運ばれたという報を受け取った。幸い一命を取り留めたらしいが、警察官を狙ったことと爆弾による攻撃、そしてなにより犯行予告状により、例の爆弾魔と同一であることが確認された。
「これがその予告状か」
 萩原の苦々しい声に松田は無言で頷く。

 俺は剛球豪打の
 メジャーリーガー
 さあ延長戦の始まりだ
 試合開始の合図は明日正午
 終了は午後3時
 出来のいいストッパーを
 用意しても無駄だ
 最後は俺が逆転する
 試合を中止したくば俺の元へ来い
 血塗られたマウンドに
 貴様ら警察が登るのを
 鋼のバッターボックスで
 待っている

 言葉回しが三年前とそっくりだ。観覧車を思い出して気分が悪くなる。当時も思ったが、つくづくふざけた愉快犯だ。不愉快な思いにより暫し沈黙していると、ドアが開いた。入ってきたのは片桐だった。「見たか」「ああ、うん」予告状は既に頭に入っているようだ。
「どう思う」
「爆弾が無線式、警察官がターゲット、似たような犯行予告状………あの時と同じ状況にならないことを祈るね」
 当時はなんとか警察官が犠牲にならずに済んだが、次はどうなるか分からない。これ以上奴の好きにさせるわけにもいかないので、気を引き締めねばならない。「?」しかし。
「…おい片桐」
「何だい?」
「大丈夫か?」
 一瞬、片桐の唇の端が震えた。「別に、何ともないよ?」だがそれもほんの一瞬きで、次の瞬間には普通だった。(……)今までならこれで引き下がっていたが、気がかりなことがあるため松田は口を開いた。が、その前に萩原がうんざりした声音で先に言葉を紡いだ。
「なんだよ、お前ら俺を置いて二人の世界に入るなよー」
「いや入ってねえから。普通に話してただけだろ」
「なんなら萩原クンも松田クンに心配されてみるかね?」
「結構デス!」
「こっちから願い下げだっつーの……」
 その後他の刑事たちと合流して捜査に励んだが、翌日に持ち越しとなった。