だが、とギーマは顔を歪める。
「悪いがもう限界だ」
「……」
「私はこの友達ごっこをやめたい。だって、男女の友情なんか、成立するわけないだろ?」
 その見解は人それぞれなので意見は控えたが、レンブは中々の二人のすれ違いっぷりに困り果てていた。
「だからあの日、レパルダスに愚痴っていたんだ。らしくもなくね」
「成程」
「だが名前に聞かれたなんて本当に予想外だ。参ったよ。まさかこんなかたちで自分の気持ちを知られるなんてね」
 ――ん?
 引っかかりのあるセリフに思わず口を挟む。
「どういうことだ?」
「だから言っただろ、聞かれたって」
「…ああ」
「恋愛相談を意中の相手に聞かれるなんて、本当に格好悪い」
 ――ん?
 ――んんん?
「だが勝算はあったんだぜ?なにせ彼女自身満更でもない付き合いだったからな。でもこうして逃げられたんだから…結局彼女は私とは親友止まりでいたかったのが本心なんだろうな」

『親友だと思ってた人に友達でいたくない・・・・・・・・って言われたらどうします?』
恋愛相談・・・・を意中の相手に聞かれるなんて、本当に格好悪い』

 ――もしかして…。
 ――もしかしてこの二人…互いにすんごい勘違いをしてるんじゃないのか…??
 名前は一言も“ギーマは自分に気がある”などとは言っていない。むしろ彼女はギーマに嫌われたと思っており、ギーマも彼女が自分の前から姿を消したことにより振られたと認識している。
 互いに前提が、ズレている。
(これは………わたしが言ったほうが良いのか…?)
「どうしたレンブ、黙り込んで。気を遣うことはない」
「い、いや…そうじゃなくてだな…」
 狼狽えたことが全面に出ているレンブを怪訝そうに見るギーマ。
「落ち着いて聞いてほしい」
「何だ」
「…名前さんはきみの気持ちにまったく気づいていない」
「…………は?」
 瞠目したギーマは、少しの硬直のあと「…いやいや」と乾いた笑みを浮かべた。
「おかしいだろう。だって、聞いていたんだろ?私の言葉を」
「私は彼女から『名前とはもう友達でいたくない』…としか聞いていない」
 瞬間、ギーマは慌てた様子で部屋から出ていった。名前がギーマから実質的に絶交宣言されたと勘違いしていると悟ったからだ。焦燥する彼を見るなんてもうないかもしれないなと思いながら、レンブはその背中を記憶に収めた。
「それにしても彼は意外と恋愛が下手なんだな」
 いつでもスタイリッシュだから、恋愛に関してもあらゆる手練手管で相手を絡めとると勝手に想像していた。いや男は皆、下手なのかもしれない。本命を前にすればどんな恋愛上級者でも型なしなのだから。
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