君を愛すのは大変だ
「済まない。その…つい先日、実は名前さんに会った」
ギョッとした様子のギーマを見たのはこの時が初めてであった。二人には申し訳ないが貴重なシーンだと勝手にありがたがる。
「何故」
詰問のような声音。
「道端で蹲っていたから思わず声をかけたんだ」
「具合でも悪かったのか?」
純粋に心配している様子に、おや?と内心首を傾げる。
「いや、どうやらお前との関係に悩んでいたらしくて…相談に乗った」
「へえ、成り行きで?随分親切だな」
少しの嘲りが乗せられたそれに苦笑を否めない。敵視される謂れはないんだがなと思いながらもレンブは会話を続けることにした。「気を悪くしないでほしいんだが、事情は聞いた」窺うように視線を合わせれば、意外ときつい交錯ではなかった。むしろそうだろうなといった、分かりきった目をしていた。
「彼女は何故お前があんなことを言ったのか分からなくて混乱しているようだった」
「…別に名前に対して言ったんじゃない」
「だが内容は彼女について、だろう」
窘めればギーマは拗ねたように腕を組む。
「他人が口を出すようなことじゃないかもしれないが…きみは今まで彼女の友人だったんだろう?なら最後まで自分が思っていることを告げるべきなんじゃないのか?」
「だからだよ」
唐突な返答に言葉を失う。
「彼女は私と友達でいたがっている…だから 友達でいたくないんだ」
真意が分からず閉口する。どういう意味だと目で問えばギーマは組んでいた腕を解いた。
「名前はね、私のことが好きなんだよ」
「…ハァ?」
思わず頓狂な声を上げれば睨まれた。慌てて口を噤む。
「私は君よりも長い時間をあの子と共にしてきた。だから分かる。私を好いていてくれているということに」
「……」
「私も名前が好きだ」
一拍、息を吸って吐く。遠くを見つめる彼の目には、憂いが乗せられている。
「しかし彼女は私を親友でいさせようとする」
「? どういう意味だ」
「特別な意味なんてない。彼女はただ、"親友"というカテゴリに固執しているのさ」
奇妙な言い回しに疑問が深くなる。言っている意味が分からず沈黙を保っていれば、ギーマがそのまま言葉を続けた。
「彼女には優秀な兄がいてね、その所為で子供の頃は中々友人ができなかったらしい。どうやらそれがトラウマになっているらしく、私を逃せば親友と呼べる人間をもう二度と作れないと思っているんだ」
可愛いだろう?とニヤニヤしながら述べる彼は先程と随分印象が違う。どうやら名前に嫌気を差して友人関係を終わらせたいのではないようだ。
「私も別に良かったよ、最初はね。ところが彼女自身が気づかないレベルで私を意識していることに私が気づいたんだ。それでも尚彼女の理性は親友を求めていたから、暫くの内は私もそれに応えようと努力した」← - back - →
ギョッとした様子のギーマを見たのはこの時が初めてであった。二人には申し訳ないが貴重なシーンだと勝手にありがたがる。
「何故」
詰問のような声音。
「道端で蹲っていたから思わず声をかけたんだ」
「具合でも悪かったのか?」
純粋に心配している様子に、おや?と内心首を傾げる。
「いや、どうやらお前との関係に悩んでいたらしくて…相談に乗った」
「へえ、成り行きで?随分親切だな」
少しの嘲りが乗せられたそれに苦笑を否めない。敵視される謂れはないんだがなと思いながらもレンブは会話を続けることにした。「気を悪くしないでほしいんだが、事情は聞いた」窺うように視線を合わせれば、意外ときつい交錯ではなかった。むしろそうだろうなといった、分かりきった目をしていた。
「彼女は何故お前があんなことを言ったのか分からなくて混乱しているようだった」
「…別に名前に対して言ったんじゃない」
「だが内容は彼女について、だろう」
窘めればギーマは拗ねたように腕を組む。
「他人が口を出すようなことじゃないかもしれないが…きみは今まで彼女の友人だったんだろう?なら最後まで自分が思っていることを告げるべきなんじゃないのか?」
「だからだよ」
唐突な返答に言葉を失う。
「彼女は私と友達でいたがっている…
真意が分からず閉口する。どういう意味だと目で問えばギーマは組んでいた腕を解いた。
「名前はね、私のことが好きなんだよ」
「…ハァ?」
思わず頓狂な声を上げれば睨まれた。慌てて口を噤む。
「私は君よりも長い時間をあの子と共にしてきた。だから分かる。私を好いていてくれているということに」
「……」
「私も名前が好きだ」
一拍、息を吸って吐く。遠くを見つめる彼の目には、憂いが乗せられている。
「しかし彼女は私を親友でいさせようとする」
「? どういう意味だ」
「特別な意味なんてない。彼女はただ、"親友"というカテゴリに固執しているのさ」
奇妙な言い回しに疑問が深くなる。言っている意味が分からず沈黙を保っていれば、ギーマがそのまま言葉を続けた。
「彼女には優秀な兄がいてね、その所為で子供の頃は中々友人ができなかったらしい。どうやらそれがトラウマになっているらしく、私を逃せば親友と呼べる人間をもう二度と作れないと思っているんだ」
可愛いだろう?とニヤニヤしながら述べる彼は先程と随分印象が違う。どうやら名前に嫌気を差して友人関係を終わらせたいのではないようだ。
「私も別に良かったよ、最初はね。ところが彼女自身が気づかないレベルで私を意識していることに私が気づいたんだ。それでも尚彼女の理性は親友を求めていたから、暫くの内は私もそれに応えようと努力した」