翌日のことである。名前はカミツレに出会った。彼女はジムリーダーでありモデルも務めるスーパースターだというのに、どういう因果なのか奇跡的に名前の知己となってくれた人物である。
「浮かない顔ね」
 再会の第一声がそれだった。
「嫌なことでもあったの?」
「むしろ私が嫌なことしちゃったのかもしれない」
「は?」
 カミツレの誘いによりカフェに立ち寄る。そこで詳しく話せと目で睨まれたため、手短に詳細を打ち明けた。彼女は名前がギーマと親友どころかまず知り合いであったことから驚いていた。
「あなたたちって結構趣味違うんじゃないの?」
「そうかな…でも話してて楽しいし」
「ふうん。タイプが違うからこそ一緒にいて楽しいのかしら」
 とはいえ彼からは絶交宣言されてしまったが。
「本人に言う勇気がなくてパートナーに打ち明けるなんて、彼、案外小心者だったのね」
「カミツレさんはギーマと話したことあるの?」
「いえあまり。でも彼って雰囲気からして損得勘定が得意そうに見えるじゃない。だから人間関係もかなり冷めてるのかと思ってたけど…」
 あなたから聞く限りそうでもないみたいね、と呟いて紅茶に口をつけるカミツレ。女性の目から見ても様になっているその姿に、内心いいなぁ、と思いながら名前は無意識に言葉を続ける。
「カミツレさんみたいな人だったらギーマも絶交しなかったかな…」
「…!」
 途端、カミツレはカップをソーサーに置くと名前をまじまじと見つめた。
「それはどういう意味かしら」
 突然声音が固くなった。何かまずいことでも言ってしまったのかと慌てたが、どこが彼女の地雷だったのか分からず、結局彼女の質問の答えを述べるしかなかった。彼女の顔色を窺いながら脳内で荒波立てない言葉を考える。
「いやだってさ、カミツレさんって強いし綺麗だし有名だし優しいしって………すごいじゃん。そんな人と親友なら絶対失いたくないよ」
「あらありがとう」
 にこりと笑ってお礼を述べたが、それが本心なのかいまいち分からない。こういう時の美人の笑顔は怖い。
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