超能力者のシャーデンフロイデ

 というわけで連れてきた。
「萩原どうしたその頬。似合ってるじゃねえか」
「うるさいなぁ」
 けらけら笑うサングラスの彼と、むくれる萩原さん。と、背後に鬼を控えている母。サングラスの彼は我が母の怒りに気づくとたちまち笑みを引っ込めた。
「貴方が娘にストーカーしてる警察官ね」
「いやストーカーじゃなくて…」
「一緒よ!この子の周りにうろちょろして超能力を暴こうとしてるんでしょ!?」
「だから誤解!誤解だって!俺たち誰にも言いませんから!」
「信用ならないわよ!そんなホストみたいな怪しい見た目して!」
「「怪しい!?ホスト??」」
「…ぷす」
「名前ちゃん笑った!?」
 だってホストみたいな怪しい見た目って。的を射ているというかなんというか。確かに二人は一見、警察官には見えない。
「いや確かに松田のサングラスはないと思うけど…」
「何で俺単体なんだ。お前もだろうが」
「いや俺はギリセーフでしょ」
「胡散臭い笑み振り撒いてよくそんなこと言えるな」
「胡散臭い!?俺お前にずっとそんな風に思われてたの!?」
「……貴方たち私を無視してよくお喋りできるわね」
 母の怒りが最高潮に達した瞬間であった。


 結局二人は身元がはっきりしている開放的なストーカーということで片がついた。
「いやおかしいよね!なに開放的なストーカーって!初めて聞いたよ!?」
「…うるさいなぁ」
「名前ちゃんってもしかしてかなり毒舌…?」
「お前が馬鹿だから冷たくなんだよ」
「松田まで………」
「大体名前の母親との初対面が名前に抱きついた状態って…そりゃ不審者だって平手打ちされても仕方ねえよ」
 それに関しては半分くらいは私の所為だと思わなくはない。だがまあ打ちのめされている萩原さんが面白いから黙っておく。
 それにしても二人は超能力について随分興味があるらしい。かつて助けたある一人とは全然違う。彼は気になっていたみたいだが私が話したくないことを察して、あまり根掘り葉掘り訊いてこなかった。彼くらいの気遣いをこの二人にも持ってほしい。
「…あ」
「ん?どうしたの?」
「何だ?」
 噂をすれば。――ピンポーン。インターホンが鳴る。迷わずドアを開けて彼の姿が現れた途端、背後で息を呑む音が聞こえた。
「こんにちは、名前ちゃん」
「…こんにちは。ヒゲ剃ったんですか」
「うん、いつまでもああなわけにはいかないから」
「似合ってますよ」
「そう?ありがとう」
 そうして彼の視線が私の背後に行く。ああ、二人はまだ玄関先だった。
「「ひ、景光!?」」
「松田に萩原!?どうしてここに?」
 知り合いやったんかい。

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