純黒の悪夢/中編

「…キミが何故ここにいるのか、問い詰めるのは後にしよう」
 その言葉には少しの苛立ちが含まれていた。折角の再会だというのにつれない。まあ、こちらが苗字の再三の忠告を無碍にした結果なので文句は言えない。
「爆弾の解体は可能かね?」
「当然だ」
「ふむ、ならばそれはキミに任せるとしよう」
 会話が一段落着いたところで降谷たちが降りてきた。「苗字…と、松田!?」何で、という表情の彼の口許は血で汚れていた。服にも斑に赤が付着しているし、一体どれほどの戦闘をしたというのだ。
「やあ降谷クンに赤井クン。呑気に観覧車の上で取っ組み合いだなんて余裕だねえ。そのまま落っこちたら良かったのに」
「相変わらず手厳しい」
「私に調べさせておいてそんなことをしているキミたちが悪いのだよ」
 降谷の背後にいる、ライフルを背負った男――松田は彼と初対面の筈だがどこか既視感を抱いた。
「…何故君がここに……というか、こいつと知り合いなのか」
「反応が遅いよ降谷クン。知り合いもなにも、キミを助けるようこの男に進言したのは私だからねえ」
「なっ…」
 降谷の顔が歪む。「“余計なことを”と思ったね?」苗字は続ける。「だがキミの気持ちなど知ったことではないよ」告げながら、彼女は踵を返す。口調はゆっくりだが時間がないと感じているのだろう。
「――キミをむざむざと死なせるわけにはいかない…不本意だが、頼まれているのでね」
「…?」
「まあそれはいい。さあ、反撃といこうじゃないか」
 苗字の話によれば敵は軍用ヘリを使ってキュラソーを回収する算段らしい。なんて大胆なんだとおっかなびっくりしたが、今回はその組織もなりふり構っていられないようだ。
「松田クン、私は電力室に行ってなんとか照明を復旧できないか試してみる」
「それまでに俺が解体しちまうかもな」
「その時は素直に拍手を送ろう」
 そこで全員が解散した。赤井はヘリを狙撃、降谷とコナンはキュラソーの回収に向かった。
「…ふぅ」
 折角再会できたというのに、相変わらず慌ただしい自分たちに苦笑し、松田も目の前の脅威と向き直った。

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