「船長たいへーん!!」
 あの騒動から三日後、ハートの海賊団は無事海に出ることができた。ローはマオに今までどこに行っていたのかと問い詰めたのだが、結局彼女はエースとキッドたちに会ったことを秘密にした(エースに関してはベポに目撃されていたが“お願い”して黙ってもらった)。
 各々があの島での騒動から回復したその日、シャチは新聞を持って皆の居る食堂に向かった。
「何だ騒々しい」
 丁度昼時だったのでローもそこに居た。相変わらず隈のある不健康そうな顔色でシャチを睨んでいるが、珍しくそれにビビることもなく彼はローの眼前に一枚の紙を突きつけた。
「…ほう」
「うわマオ、いつの間に海軍と会ってたの?」

【Alive Only"Grim Reaper・Mao"50000000B】

 ゴスロリ姿で振り向きざまのマオの写真の下には、そう記されていた。
「(Grim Reaper…意味は“死神”…)妙なあだ名付けられたモンだな」
「写真可愛く写ってて良かったね。ゴスロリ買って正解だなあ」
「ベポ観点違う」
「にしても五千万ベリーか。マオ、一体何しでかしたんだ」
 尤もな疑問を口にするペンギンに、マオは口角を上げてただ首を傾けた。
 「言え、何があった」が、沈黙は許さないらしくローは詰問する。やれやれという空気を惜しげも無く出し、マオは仕方なしに口を開いた。
「……氷の人と会っただけだヨ」
「氷って…まさかマオ!青雉と結局会っちゃったのかよ!」
 逃げるぞって言ったのに!と憤慨しているシャチの言葉を聞き流し、ローは一人思考の波に呑まれる。
 『気ィつけなよ。あの娘、死神だ』
 老婆の言っていたことが、脳裏にこびりついて離れない。その死神とは、大鎌を持ち死を運んでくるあの死神のことなのか…はたまたそういう二つ名なのか…真相は分からない。が、少なくともマオが自分たちに何か隠していることは間違いない。
「…死神、か」
「どうしたんですか、船長」
「いや…何でもない」
 ローの疑念もマオの真意も、解る者は誰一人として居なかった。