その日は青空が霞んでいた。ローは甲板に出て空を拝む。彼の視線の先には点のような島がある。その島へ停泊する予定だ。
 彼の背後にはベポで遊ぶマオがいる。キハハハと奇妙な笑い声をあげているマオを耳障りだと思いながら、ローは彼女たちを盗み見た。怖い怖いと言いながらもちゃんと彼女と向き合うベポは一見すれば変人、いや変熊だ。まあそれはきっと己も該当するのだろうが、どうにも彼女は“イカれてる”だけで片付けられないのだ。だから、ローはついついマオを気にしてしまう。
「そろそろ着くぞ。準備しろ」
 そんなことを考えても無駄だ。ローは頭を振り、思考を散らせた。

 ハートの海賊団が次に訪れた島は、閑静な島だった。前回訪れた島とは正反対である。
あんまり楽しくなさそうだなあ、だの暇になるぜこりゃ、だの愚痴ているクルーたちを一瞥してローはマオを探す。
「島を歩くつもりか」
「キシッ」
「…あまり派手なことはするなよ。ペンギン、ついて行け」
 早速降りようとするマオに溜息が出る。アクティブな奴だと思い、ローは船内に入ろうとした。「あっれー!船長、今日は出んつもり?」ピタリ、足が止まる。
「…俺の勝手だろうが」
「でもええの?不思議ちゃん放っておいて。ペンギンだけじゃ心許なか。ボクも行ってええやろか?」
「…アシカ、お前あいつのこと嫌いじゃなかったのか」
「ひゃっはは!嫌いじゃなか、苦手ぜよ」
「似たようなモンだろうが。…勝手にしろ」
「了解」
 ゆっくりしたい気分なのだ。不穏因子に目くじらを立ててばかりいたくない。今日は絶対に部屋から出ないぞと意気込み、ローは今度こそ船内に足を踏み入れた。
 その決断が更に疲労を増加させることになろうとは、今のローは勿論ながら知らなかった。