シャボンディ諸島。偉大なる航路(グランドライン)の前半部にある島。 島と呼ばれているが、実際はヤルキマンマングローブと呼ばれる巨大な樹木の集合体で、そのため偉大なる航路の島特有の磁場が発生しない。各々の樹木に番号が着けられており、それが島の区画として使われている。
「シャボン玉!」
「掴んだら潰れちゃうよ」
 そんな場所に、ロー率いるハートの海賊団は上陸していた。理由は海底ルートを通るための準備をする為である。人が多い土地である。絶対にはぐれるなと釘を刺されていたので、マオはベポと手を繋いでいる。そんな中、トンとマオの肩に何かがぶつかる。直後、ドシャァと倒れる音。ベポたちがそちらへ視線を向けると、女の子が倒れていた。傍らには荷物がばらまかれている。「あ……」女の子は顔を青くして震えている。よく見ると膝小僧が擦り剥けている。大丈夫かとベポは話しかけようとしたその時、茜色の髪が先を行くのが見えた。
「こらマオッ!!」
 ごちん!!ベポは思いきりマオの頭を叩く。不意打ちだったので彼女は頭のてっぺんを押さえてベポを見つめた。
「何で無視して通り過ぎようとするの!謝りなさい!!」
「…謝るの?」
「当たり前だよ!悪いことしたなら“ごめんなさい”でしょ!」
「…やつがれ、ワルイことしたの?」
 それは不貞腐れて訊ねたものではなく、単純に気になって訊いただけであった。マオはいつもの笑みではなくポカンとした間抜けな表情をしている。
「良い?マオがわざとこの子にぶつかったんじゃないのは分かるよ。でもね、この子怪我してるじゃん、傷つけたのに手を差し伸べることもなく、ましてや“ごめんね”の一言も無しで通り過ぎるのは駄目だよ」
「ふーん」
 ベポの言い分に納得したのかそうでないのか分からない返事をしたマオは、女の子の前にしゃがみこんでごめんね?と言った。その表情は、気味の悪い笑顔だった。ますます女の子は蒼白になる。そんな彼女に気づいていないのかマオは擦り剥けた膝小僧に手を添える。瞬間、そこは淡く光る。マオが膝小僧から手を退けた時には、傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
「ええ!どうやったんだよ!?」
「治した、のか?」
 驚く声にマオは回道だよと答える。「か、回道?」「治療のことだ」シャチの疑問にすかさずローが助言する。
 女の子は戸惑いながら荷物をまとめ、マオに頭を下げると走ってどこかへ行ってしまった。