「お前が俺の言うことを聞くってんなら、その移動の解明をしてやってもいい」
 ――それは、どういう意味か。
「俺の情報網を駆使して、自分の意思で世界を股にかけられるようにしてやるって言ってんだよ」
「…………、」
「そうすりゃお前は自分の好きな時に元の世界に帰れるし、ローに返すモンも納得がいくまで返し続けられるだろ」
 ドフラミンゴの話はあまりにも都合が良すぎた。そんなあっさり世界を行き来できるわけがないし、彼がどれだけ偉いのか知らないがそんな簡単に謎が解明できるとも思えなかった。そもそもこういう事態が以前からあったのなら、マオが所属している技術開発局が何らかの調査をしている筈だ。しかしマオが知る限り、こういった経験が報告された覚えはないし、現世や虚圏、断界以外の別空間があることも確認されていない。
「信じられないネ」
 技術開発局局長・涅マユリが発見できていないようなことをこの男が先に見つけるなど、マオには到底疑わしいことであった。
「マジかよ。信じられないか」
「オマエみたいなフラミンゴがそんなモンを発見できるわけがないヨ」
「“ド”フラミンゴな」
 まあ良いか――――そう呟き、ドフラミンゴが扉に足を向ける。
「時間はあるんだ。ゆっくり考えろ」
 そう述べてドフラミンゴは退室した。
 (あいつ邪魔だナ)マオはこの世界に来てから初めて意図的に笑顔を消した。左手首に嵌められている殺気石の表面を撫でて、舌を打つ。
「とっとと出るかァ」
 ローのことだからきっとマオのことを探しているだろうが、彼が見つけてくれるのを待ってられない。マオは一人悪い笑みを貼り付け、思考を始めた。