「あれっ?お前確かシャボンディ諸島にいた奴じゃねーか」

 その気配の正体は、かつてヒューマンショップで出会った麦わら帽子の男だった。彼は海賊だった筈。となると、己と同じように囚われの身なのだろうか。その割には随分自由そうだが。
「こんなところで何やってんだ?」
「こっちの科白だヨ」
 海賊の彼が何故敵地にいるのか。
「捕まったの?」
「いや!今はエースを助けに行くところだ!」
 ――エース。
 聞き覚えのある名前に目を細める。ルフィはそんなマオの様子を気にせず、その場から去ろうとした。
「エース、何でここにいるの」
 しかしそれはマオの一言により停止する。振り返ったその顔には驚きの表情があった。「お前エース知ってんのか!?」どこか希望ある声色だ。まあネと答え、先の質問の答えを促せば、どうやら彼は処刑を待つ身になっているそうだ。
「今度捕まえるって言ってたくせに…キシッ」
「ん?」
「こっちの話だヨ」
 彼に詳細を教える必要はない。
「手伝ってあげても良いヨ」
 ただ端的に、協力の意向を述べる。
「ほっ本当か!?」
「ただしやつがれの拘束を解いて斬魄刀を取り戻す手伝いをしてくれるなら、だけどネ。やつがれも流石に丸腰じゃ戦いにくいヨ」
「分かった。協力する」
 早い判断だ。即断は時に過ちを加速させるが、この場合は正しい。
「ん?何だこの腕輪。海楼石じゃねーな?」
「殺気石。やつがれだけに効く拘束具だヨ」
「ふーん」
 興味なげに返事をして、ルフィは殺気石をぐっと掴むと思い切り引っ張った。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!」
「やつがれの腕が痛い」
 腕までもげそうだったので無理やり突き放せば、ルフィはあっという間に後退した。じくじくと痛む腕を撫でる。やはり単純な腕力では解除できなさそうだ。殺気石よりも先に斬魄刀を探すほうが手っ取り早そうだ。
「んじゃあ先に刀を探すか!そういやオメーの名前って何だったっけ?」
「マオ」
「じゃあ行こうぜマオ!」
 若干の心配を抱きながらもルフィの背を追う。ここで他の選択肢はマオの中では存在しなかった。