「ヴァナタ、それおちょくられてるわよー!」
 そう高らかに言ったのは、顔が巨大なオカマであった。
 麦わらのルフィと協定を結んだマオは、彼と共に脱獄したイワンコフというオカマと魚人族のジンベエに己がここに捕まった経緯を話していた。彼らはドフラミンゴのことを知っていたようで、イワンコフはマオの一連のことを知ると先の言葉を繰り出したのである。
「ここはインペルダウンっていう監獄だし、まあヴァナタを懐柔したいっていうのは本当かもしれないけど、それだけじゃない筈よねー?」
「あいつって何なノ?」
「七武海で最も危険な男じゃよ」
 そう述べたのは、ジンベエであった。
「リク王家を罠にかけ自らが王位の座に着き、天竜人ともコネクションがある恐ろしい男じゃ」
「フーン」
「……お前さん、分かっとらんな?」
「うん。リク王家とか知らないしネ」
「なんと!最近の若いモンは…!」
 よよよと額を押さえるジンベエに反し、イワンコフは面白い子ね!と笑った。
「それで、ヴァナタの腕輪を外さなきゃいけないのよね?」
「そうだヨ」
「鍵の居場所なら詳しいだろ、お前」
 突然の声にマオの背後に目を向ければ、葉巻を吹かした男が佇んでいた。
「だれ?」
「サー・クロコダイル。いろーんなワルイことをして牢獄行きになっていた元七武海よ」
 声が聞こえていたのかクロコダイルが不意にこちらに顔を向けてきた。敵意はない。ただ、妙に観察眼だったのでマオは何だと問うた。すると彼は薄い表情で「ドフラミンゴに目をつけられるなんてご愁傷様だな」と述べた。
「ドフラミンゴも七武海の一員だから、この中じゃあの子が一番ドフラミンゴのこと知ってるのよ」
「なーる」
「…ハッ。お前みたいなちんちくりんを囲うなんてあいつも落ちぶれたもんだぜ」
「ちんちくりんじゃないし。やつがれはマオ」
「お前みたいな奴はちんちくりんで充分だろ」
「ア?」
 危うい雰囲気になってきたところで「そこまでよヴァナタたち!」とイワンコフが割って入ってきた。ここで口論している場合じゃないと窘められ、仕方なく口を噤む。クロコダイルも然して意地を張っていなかったのかすぐに大人しくなった。
「オメーら仲良いんだな!」
 が、空気の読めないルフィによりまたもやピリリとした空気になってしまった。