流石監獄に潜伏していたというべきか、鍵類の保管庫をあっさり見つけることができた。
「殺気石っつったか?その腕輪…鍵はこれか?」
「お、ハマったネ」
 いとも簡単に解除できた腕輪。締め付けられていた手首を擦っていると、先に保管庫の奥に入っていたルフィが「刀がある!」と声をかけてきた。マオの斬魄刀だった。
「随分あっさり見つけられたのね」
「あのフラミンゴ野郎なんか企んでるネ。キシッ」
 むしろ自分で取りに来させることが目的のようにすら思える。――誘導されていると考えるのに時間はかからなかった。とはいえ今はこうする他ない。エースも救わねばならないのだから。
「おい」
 逡巡の最中、クロコダイルが話しかけてきた。
「何だヨ」
「お前何者なんだ」
 とても単刀直入だ。
 外の脱獄者たちは各々マオの背後で今後のことを話していて、今の会話は聞こえていないらしい。まるで今この世界にマオとクロコダイルしかいないような、そんな錯覚さえ感じるほどの静かな会話だったからだ。現に彼は静寂の気色を浮かべてマオを見つめている。
「これは勘なんだが…」
 マオが先の質問に答えるより先に、クロコダイルが口を開く。
「お前はどうにも普通の海賊とは思えねえ。俺たちとは何か決定的に違うモンがある…そうだろ」
「それを知ってどうするわけ?」
「ドフラミンゴはそれに固執してんだな?」
「答える義理はない」
「成程、答えられないようなモンを抱えてるのか」
 ――あ、こいつウザい。
 不快感に抜刀したくなったが、ここで事を荒立てるのは良くないと知っていた。
「やつがれにそんな興味があるとは知らなかったヨ。今度お茶でもする?」
「おう良いな。化けの皮剥がしてやるよ」
 おそらく、二人の今の心境は同じだろう。

 ――こいつ…気に食わない。