――死ぬにはまだ早いんじゃない?
 そう、彼に告げた時、彼はひどく間の抜けた顔をした。


 やっとの思いでインペルダウンから抜け出し門を突破した一同は、何らかの衝撃による後退や津波を受け流し、氷結した波の上で留まっていた。
「これからどうすんノ?」
「滑り落ちる!」
「面白そう!やる!」
「お前らには恐怖ってもんがないガネー!?」
 Mr.3の信じられないと言っている顔を一瞥し、時間がねえ!と叫ぶルフィ。それを皮切りに実力者たちが一斉に氷の地面に攻撃を加える。すると――割れた。
「落ちるうううぅぅううぅ!!」
 そう、割れたということは真っ逆さま。船もろとも下へ落ちてゆく。地面はコンクリートか氷上。直撃すれば無事では済まない。
「誰か助けてえぇええぇえ!!」
「あ、俺ゴムだから平気だ…」
「なに自分だけ助かろうとしてるガネ!」
「…しょうがないなーもー」
 下に向けて手を突き出す。この技を使うのは久しぶりだ。
「縛道の三十七、吊星」
 名前通り星型の霊圧の床が出現し、それがクッションとなって全員を受け止める。
「マオすっげー!」
「何の技だこりゃぁ…」
「なあ!お前エース助けたあと俺の仲間になれよ!」
「それは無理。あ、ほらあそこ見てヨ麦わら」
 下には海兵と海賊たちの乱闘。そしてその中央にそびえる処刑台。そこに、彼はいた。鎖に繋がれて。あの精悍な佇まいからは想像もつかない程、自由を奪われた姿をしていた。
「エース!助けに来たぞー!!!」
 ルフィの高らかな叫びは敵味方関係なく視線を集めることになった。クロコダイルやイワンコフ、ジンベエを従える(この表現が不適切であることをマオは知っている)彼は、傍から見れば奇妙なことこの上ないだろう。
「あれ?あん時のお嬢ちゃんじゃない」
 暫し離れたところにはいつか出会った雉野郎が。そういえば彼も政府側の人間だった。
 だが関係ない。マオが抜刀すればそれが合図になったかのように全員が動き出した。ある者は白ひげに向かい、ある者はそれを阻み、またある者は逃げる準備をし…と目的が一致していなかったので統率は乱れに乱れた。
「アホくさ。やつがれ勝手にするから」
「アッ待ちなさいマオガール!」
 イワンコフの制止を無視し、マオは仕掛ける。久しぶりの戦いに気持ちは高揚していた。
 最初に狙う獲物は、ただ一人。
「フフフフフ!やっぱり抜け出して来たか!」
「相変わらず食えない奴だネ」
 得意のお礼参りだ。マオは刀を振り上げた。