力の放出によりエースを中心に大きく閃光したが、一瞬きした時にはもう彼の中に力が譲渡されていた。分量も間違えず、完璧な行いであった。
「できたのか…?」
 ルフィの縋るような声にしっかりと頷いた。
「内臓の修復もちゃんと施した。あとはオマエでも処置できる筈だヨ」
「わ、分かった!」
 あとは船医に任せ、参戦しよう。座りっぱなしだった足に力を入れて立ち上がろうとしたが…上手くいかない。終いには力の調節ができずにそのまま膝から崩れ落ちた。
「大丈夫かよい!?」
 倒れる直前にマルコに支えられた。
「よく分からねえが治療してくれた上に力まで分け与えてくれたんだろ?無茶すんなって」
「……やつがれはそんなにヤワじゃないヨ」
「そういう問題じゃねえよい!いくら頑丈だからってお前にも限界ってもんがあるだろうよ!」
 マルコに一喝され、背後へ回される。「エースとこいつらを早く船に乗せてやれ!退くぞ!」彼は既に戦闘態勢に入っていた。「こいつら…?」不思議に思い見回してみると、傍らにいるルフィの意識が飛びかけていた。
「精神も肉体も限界を迎えていたのよ。ジンベエ!麦わらボーイを抱えて先に戻るのよ!マオガールはまだ走れる?!」
「トーゼン」
「了解した!行くぞマオくん!」
 正直なところこれ以上の戦闘は痛手になるため引き際だとは思っていた。イワンコフの気遣いをありがたく頂戴し、マオは踵を返す。
「逃がさん!!」
 しかし大人数でも抑え込めないサカズキの追撃。それに加え――。
「フッフッフ!お前の帰るところはそっちじゃないぞ?マオ」
「ぐっ…」
「マオくん!」
 思い切り横腹を蹴られ吹っ飛ばされる。空中でなんとか体勢を整えたものの、痛みを我慢できずに片膝をつく。
「砂嵐(サーブルス)!」
 突如前方にいたドフラミンゴが砂に囲まれた。これは確かクロコダイルの能力だ。驚いて彼に目を向ければ、思い切り睨みつけられた。
「しっかりしろ!立て!!」
「っるさいな……破道の三十三、蒼火墜!!」
 砂嵐の中心に鬼道を叩きこむ。だがそれでも、砂の向こう側には気配があった。
(威力が弱かった…この状態で詠唱破棄はきつい…)
「大丈夫かマオくん!まだ走れるか?!」
「ヘーキ。今の内にとっとと行…!」
 ぴちゃり、と。水滴。何かの液体が、マオに降りかかった。瞬間的に悪寒が走る。
 力が入らない。
「う、ッく」
「! おい、どうした」
 いち早く異変に勘付いたクロコダイルがこちらに近寄ろうとしてきたが、それをドフラミンゴが妨害する。
「穿点(がてん)っていう、死神にのみ有効な麻酔薬だ。知らねえだろ?」
「テメェ…!」
「さあ帰るか、マオ。この戦いでお前に訊きたいことが山ほど増えた」
 ぐいと腕を引っ張られる。抵抗する力も湧かず、引きずられるように立たされる。
 ――その瞬間、どういうわけか聞き覚えのある声がマオの耳に届いた。

「“シャンブルズ”」