スカートの裾がはためく。ゴスロリをいたく気に入っているマオは、町に繰り出す時は大抵この服を着ていた。
「お前それ気に入ってんなぁ」
 シャチの感慨深い声にキシッと笑うマオ。
「良いもんは着なきゃ勿体ないデショ」
「まあな」
 とある島、とある町にて。他と比べれば比較的穏やかなこの地は、激戦にて負った傷を癒やすには丁度良い場所であった。とはいえ出払っているのはハートの海賊団のクルー数名だけであり、船長のローはエースの体調を鑑み、ここのところ暫くは船内で待機していた。ルフィもまた同じである。
 マオが起こした一件は、兄弟の心にひどく響いているらしい。
「お前よくドSって言われるんじゃね?」
「どえす?ナニソレ」
「超サディストってこと」
「ちょーさですと?」
 ―――あ、通じてねえわこれ。
 面倒になったので説明を放棄するシャチ。マオも特に興味がないのかシャチから他の建物へと視線が流れた。
「ちょっとあっち見てくるネー」
「あっこらマオ!」
 宣言の途端走り出したマオ。勝手な行動をすれば面倒な事態を引き起こすということを何一つ学んでいない。問題が起こればシャチだって睨まれるのだから勘弁してほしい。
 足の速い彼女を今更追いかけても無駄だというのは学んでいるため、シャチはとぼとぼと歩く。
「マオって多分バカだからな〜言い聞かせても分かんないだろうな…」
 本人の前では口が裂けても言えないことを呟き、さてどうしようかと悩む。どうせ夕方頃には腹を空かせて帰ってくるだろうが、いかんせんシャチはこのまま直帰すればクルーたちに一緒にいない彼女のことを訊ねられるだろう。特にペンギン辺りはマオを単独にしたことに小言を述べるかもしれない。ペンギンの小言はローの次に怖いのでそれは避けたい。
 ―――結局探しに行くしかねーじゃん。
 ―――俺、お守役じゃねーんだけど。
 やれやれと溜息をつき、最終的にマオが消えた方向に足を向ける。俺はなんて面倒見が良いんだと自画自賛していればふと看板が視界に入った。たくさんの紙が無造作に貼られていたので指名手配書なのかと思ったが、目を凝らせば違うことに気づいた。
「………え」
 “MISSING Mao”
 捜索願い――または、行方不明届けだった。