シャチはすぐさまこの町の役場に向かった。既に指名手配書が配布されている中で、わざわざ捜索願いを出すというのは些か引っかかりを覚える。捜索願いを貼った者に何かしらの事情があることが察せられた。
「向こうにある看板って誰でも紙とか貼れるの?」
シャチに対応した穏やかそうな役人は「そうですねえ」とのんびりした口調で述べる。
「一応こちらで手続きはとってもらいますが、それさえ行えば誰でも可能ですよう」
「そっか。この紙貼ったの誰か分かる?」
「うーん、そうですねえ…」
役人は暫くマオの写真(海軍からの手配書と同じものだ)を眺めれば、ああそうそうと目を瞬かせた。
「確か女の子だったなあ」
「は?女…?」
「年端もいかない感じだったけど、しっかりした子だったなあ」
「……そいつ、名前は?」
訊けば役人は少し困った顔をした。
「そういうのはお答えしかねます…」
「おいおい、立場分かってんのか?俺はハートの海賊団のクルーだぜ?素直に吐いとけよ」
「そう言われましても……」
顔にどうしよう、と堂々と書かれている役人は頬に手を当てオロオロしている。埒が明かないなと思っていると「シャチどうしたの?」と声がかかった。
「ベポ!」
「こんなとこに何の用?」
「ひえっクマが喋った!」
「喋ってすみません…」
「ンな落ち込んでる場合じゃないぞ」
これ見ろよ、とベポに捜索願いの紙を渡す。ベポはMISSINGの文字に首を傾けた。「何で捜索願い?」シャチと同じ疑問を抱く。
「知らねえよ。でも誰かがマオを探してるのは確かだ。理由は分かんねーけど…」
「殺す為ってわけじゃ…なさそうだね」
「これ貼った奴は女らしいぞ」
「人間のメス?」
もし本気で探すつもりなら他の島にも配布されているだろう。相手の狙いが分からない内は無闇に彼女を外に出すべきではないのかもしれない。
―――あー…結局走り回って探さなきゃなんねーのか。
最初の選択に戻ってしまい思わず溜息をつく。
「とにかくキャプテンに言いに行かなきゃね」
「ああ、でもその前にマオ探すぞ」
「えっ何で?」
「あいつ一人にさせたの知られたら怒られる…」
なんやかんやで誰も何も学習していない。「そっか。それもそうだね。んじゃさっさと探しに行こう!」ベポはそう言うとさっさと役場から出た。
それがまずかった。
「お前らが役場なんかに何の用だ?」
「「!!!!」」
―――やっぱり俺はついてねー…。
この場にいる筈のなかったローの不満そうな表情を一瞥し、シャチは天を仰いだ。