翌朝、食堂へ向かうと既にローは居た。他の者たちはパンを食べているのに彼だけおにぎりを頬張っているのはなんだかおかしかった。遅かったな、だなんておにぎりを飲み込んでマオにそう言うローはどこか呆れを滲ませていた。
「おはようマオ!こっちおいでよ!」
「にしっ」
 ベポの言葉に従って、マオは彼の隣に座った。わざわざ空席にしてくれていたようでマオの向かいにはロー、右隣はベポ、左隣はシャチだった。
「マオはパン食べられる?」
「くまおにぎり!」
「おれはやめてよ!?」
 今にもベポに迫ろうとするマオの目の前に、突如白い物体が飛び込んできた。何かと思いまじまじと見てみるとそれはおにぎりだった。おにぎりを持っている手は、間違いなくローのものだ。
「そんなにおにぎり好きなら食え」
(キャ、キャプテンが自分のおにぎりを分け与えるなんて…!?)
(明日、いや今日の天気は大荒れか!?)
「……お前ら今失礼なこと思っただろ」
 ローの眼光にベポとシャチは慌てて首を横に振った。そういう行動が逆に怪しいんだよとマオが呟くと、ベポたちだけでなくローも驚いた顔をした。どうやらマオが思いの外まともな発言をしたのが意外らしい。失礼だなあと内心怒りながら、マオは貰ったおにぎりを咀嚼する。
 美味しい?とシャチが訊ねると、マオは大きく頷く。それを見たローは、僅かに身動いた。
「…お前、もしかしてパンよりもおにぎり派か?」
「ん?うん。やつがれが居たところは主食はご飯ばっかだし」
 指についた米粒を舌で取りながら答えるとローは分かりやすく嬉しそうな顔をした。が、それも一瞬で今度は急に神妙な表情をした。それは両隣の彼らも同じだ。
「お前意外と…」
「何、メガネおにぎり」
「メガネおにぎりった何だよ!わけ分かんねえよ何でもかんでもおにぎり付けるのやめろ!」
「…つっこみ長い」
「誰の所為だ誰の!つかそれより…」
 どういうわけか言葉尻を濁すシャチに、マオは首を傾げる。先程から無言のローも気になる。果てには「マオは天然ちゃんなんだね」とベポは言い出した。
「…まあ良い。それよりもお前、おにぎり作るか。それだけじゃ足りないだろ」
「作る!」
 バッとすぐに立ち上がり、マオはキッチンへ向かう。それにローも続いた。
 取り残されたベポとシャチは互いの顔を見合う。
「…マオって意外と色気あるんだな」
「だね。それよりもキャプテンって結構世話焼きなんだ」
「あ、それ俺も思った」