おんなのこのはなし
ひどい嵐だった。突然の雷雨に戸惑いヒカリたちはとあるポケモンセンターに逃げ込んだ。太陽が遮られている所為か照明があるにも関わらずセンター内はどこか暗い印象である。
「近くにポケモンセンターがあって幸いだったな」
タケシの一言に頷いた折、ヒカリは前方に見覚えのある姿を見つけた。
「スリナにシンジ!」
呼びかけに振り返ったスリナはヒカリたちを認めるとパッと顔を明るくしたものの、シンジは嫌そうに眉根に皺を刻んだ。ヒカリの隣にいるサトシも「げっ」と声を上げるとシンジと似たような表情を作った。
「二人も嵐の所為でここに?」
この二人に視点を合わせていれば会話が進まないためタケシが会話の口火を切った。
「そうなの。突然だったからびっくりして…時間も時間だし今日はここで部屋を取ったの」
時刻は夕方を過ぎている。この天候での外出は良くないということは誰もが理解していた。
「お互い災難ね。あたしたちもここに泊まるつもりよ」
「あの〜」
そこで申し訳なさそうにジョーイが割り込んできた。
「実はお部屋が満室でして…」
「「「ええっ!!」」」
なんということだと三人の驚愕の声が木霊する。
彼女曰く昼間は空室が多くあったのだが、天気が急変してから宿泊するトレーナーが急増したらしい。元々回復のみで滞在していたが念の為一晩ここで過ごすといった者もいたようだ。
「どうする?オレこんな天気で野宿なんて嫌だぜ?」
先程までシンジと睨み合っていたサトシもこれには反応した。するとスリナが一言。
「わたしたち二つ部屋を取ったから一部屋使う?」
「おいっ」
「えっ良いのか!?」
「わたしとヒカリ、シンジとサトシたちで泊まれば問題ないでしょ?」
先程まで嬉しそうに笑みを浮かべていたサトシがシンジと同じようにギョッとする。その感情の振りがあまりにもあからさまだったのでヒカリはぷっと笑ってしまった。それとほぼ同時にシンジが踵を返す。
「オレは出る」
「野宿するの?流石に死ぬよ」
「こいつと同じ部屋よりマシだ」
「オレもこいつとなんか……!でも野宿は……ん゛〜……あっそうだ」
渋い顔だったサトシが名案とばかりに手を叩く。
「スリナとシンジが一緒に泊まれば問題ないだろ?な、頼むよスリナ」
すると彼女は困ったように笑った。「うーん、それはどうかなあ……ね?」そう言ってシンジに視線を投げかけるスリナ。視線を受け取った彼は少しばかり口元を歪めたものの、無言だった。その様子にヒカリはおやと訝しむ。てっきりサトシやタケシといったあまり親しくない者と同室になるくらいなら一緒に旅をしているスリナを選ぶと思ったし、スリナもシンジとの同室ならあっさり頷くものだと考えていた。
(なんか意外……)
拍子抜けというかなんというか。二人はもっと仲良しなものだと勝手に認識していた。
「サトシ、ここは我慢して俺たちは男同士で一晩凌ごう」
「えぇ〜」
「シンジもそれで良いだろ?いま外に出るって言うなら俺のグレッグルのどくづきをお見舞いしなくちゃならないな」
タケシの一言にシンジはかなり不機嫌そうに舌を打つと、スリナに向き直った。
「明日は七時半に出る」
「流石に早すぎでしょ!」
思わず声を上げればお前には言ってないとばかりに睨まれた。
「それが嫌なら置いて行く」
「はいはい分かったよ。七時半だね」
「フン」
了解したスリナからルームキーを奪い取るとシンジはさっさと部屋へと向かっていった。
「なにあれー!ほんっとに感じ悪いんだから!」
「まあまあ。ほらヒカリ、わたしたちも行こ」