昼から雨が降りだした。木手たちから応援を貰った平古場はせめて、なんとしてでも会話しようと意気込んで午後からの練習に臨んだ。しとしとと囁く外を時折見る。先程の意気込みが流されそうで少し嫌だった。
「…平古場、雨好きなの?」
 がしかし、そんな思いはすぐに吹っ飛んだ。
「なっ…え、越前…!?」
「私、結構好き。服が雨に濡れるのは嫌いだけど雨音とか聴いてると落ち着くの」
 前言撤回。雨が好きになった。現金と木手あたりは言うだろうがそんなことはどうでもいい。ただ梨胡が話しかけてきてくれたということだけが重要なのだ。
 そんなことを考えていたら、ふと梨胡がこちらをじっと見つめてきた。きらんと輝く瞳が相変わらず美しい。
「…平古場、やっぱり少し休んだほうが良いと思う」
「えっ?な、何で?」
「ボーッとしてるから」
 そう述べ、顔を覗きこむ梨胡。
「(っち、近い…!)…………っ〜〜〜!」
「顔、少し赤いしやっぱり体調不良なんじゃ…」
「あらん(違う)!あね、ちゅーちょっとあちさんから!」
「えっ?」
「あ、えと、今日、ちょっと暑いから…………」
 平古場は梨胡以上に怪訝そうに首を傾けた仕草が似合う女の子を見たことが無かった。
「暑い?でも今日はそんなに気温が…」
「い、いやほら、さっき体動かしたし、体温上がったから…ははは」
「ああ成程」
 (うわあああああうわああああ!!)できるだけ平静を装っているが、平古場はたいへん慌てていた。こんなにも会話が続いているなんて奇跡に近い。少しでも梨胡の記憶に残りたい――だから平古場は必死に次の話題を考えた。
 しかし。
「越前さん、ちょっとええか?」
 聞き慣れない関西弁に肩が跳ねる。「何?」梨胡の瞳は既に平古場を映していなく、背後にいる四天宝寺の白石を捉えていた。
「済まん、ちょっと訊きたいことがあって…ええやろか?」
「うん」
 優しい顔で梨胡を見る白石。それでいて少しうきうきした雰囲気を持つ彼に、平古場はどういうわけか既視感を覚えた。(え、まさか…まさか…)どうやら敵は、不二だけではないらしい。
ラズベリーよりもすっぱい恋


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